「ヒーロー、KEN×Ⅲ!」(2022/05/19)

タイトル「ヒーロー、KEN×Ⅲ!」

短編:三〇分〜一時間

登場人物(基本、名前無しで話は進んでいく)


・サキ……拉致られた女。

・犯人……女を監禁した犯人。

・A……正当な扱いを求め、日頃労働に励む健全ヒーロー。お金にがめつい。犬持。

・B……地方出身の正義感の強い戦士。うっかりして、いつも万全に戦えない。剣士。

・C……事件解決をする有名な某探偵。この人いるから事件が起きるアンチテーゼ。ケン一。

・ナレーター…自己紹介時のナレーション担当。本人の声でも可。


概要:

捕らえられた女を助けに、三人のヒーロー登場する。

三つのオムニバスコントを一つの台本にしたワンシチュエーションコント。


① (正当な扱いを求め、日頃労働に励む健全ヒーロー人呼んで“バイトリーダー”参上!時間を確認し、夜勤手当を求めてくる。しかも前払い式。女から金を受け取ると途端に力が漲り、日頃の正社員からのバイトいじめの鬱憤を晴らすように、悪に攻撃技を打ち込む。(攻撃技名が、バイトで不当に酷使されていることが察せる)最後、女を助けるも交通費を求めてくる。)


② (テーマパークの代表作!人呼んでゆるキャラ戦士(山の神なまはげでも可)いつも急いで駆けつける為、いつも何かを忘れてしまう。初回は、頭の被り物を忘れてしまい、悪に指摘され気づく。あっけなく負け、悪に逃げられると「完璧に揃っていれば……」と言い訳。うっかりさんで毎回なかなか実力を出せない。だがそこが憎めない。そのうち、悪が先を見越して予備を持ってきてくれたりする。)


③ (「私が舞い降りし場所、必ず事件あり!人呼んでアンチテーゼ!」コナン君の姿で登場。「待っていたぞ。俺の居る場所お前ありっつってな」「私ダシにされた!?」「ああ、お前なんぞ少しも興味ない」暫く愛の確かめ合いが続きサイレンが鳴る。「警察だわ!」「逃げろ!」「いいのか?だってお前は」「それ以上言うな」去り際にキャッツアイの手紙を渡す。大事そうに受け取り、悪を見送る。「また会えるかな」胸が高鳴る。) 




○地下

N「コント、誘拐犯」

暗転。

椅子に縛られたサキとピエロのお面を付けた犯人。

サキ「この縄をほどきなさい!」

犯人「ははは、そんなに暴れたって無駄だぞ! おとなしく俺の暇つぶしに付き合ってもらおうか」

サキ「くそ! あの時、興味本位に織田裕二似の男を尾行していなければこんなことには!」

犯人「織田裕二……? 何の話をしている」

サキ「あなたの目的はなんなの!」

犯人「はははは、命令するのは私だ。さあ、パーティーを始めようではないか」

N「監禁犯のスペシャリスト、その名も変態ピエロ」

犯人、刃を舐めるような煽ったポーズ。

犯人「女の体久しぶりだからな! では、手始めに」

犯人、サキの体をまさぐる。

サキ「きゃあ! そ、そこだけは! ふふふ、ちょっとくすぐったい。やだ! やめて、きしょい! きしょいって言ってんだよ」

サキ、犯人を蹴る。犯人、飛ばされてうずくまる。仮面が取れる。

犯人「痛い! 女なのに、す、すごい力だ! あ、ちょっとまって。これ絶対骨折れてるわ、うん。……何してくれやがる、女!」

サキ「失礼しちゃう、大げさね。骨は折れてませんよ。あと五秒もすれば、痛みは引きます」

犯人「なんでそんな事がわかる」

サキ「……3,2,1、はい。立ってみて下さい」

犯人、半信半疑で立ち上がる。

犯人「あ、ホントだ! 痛くない! えー、なんでなんで」

興奮してジャンプるする犯人

サキ「私、整体師なんで。体のことはおまかせあれです」

犯人「すげえ、リアル北斗の拳じゃん!」

サキ「えへへ、それほどでも。えっと、……北斗の拳ってどんな作品でしたっけ」

犯人「も〜! ほらほら、(真似して)お前はもう死んでいる。……ってやつ。時間差で敵が死ぬんだよ」

サキ「あー、あれか〜」

犯人「そー、あれあれ」

サキ・犯人、笑い合う。

サキ「あはは、じゃあこれ外してもます?」

犯人、サキの首元に刃物を向ける。

犯人「油断したな。ハイ、分かりました、て素直に言う奴がどこにいるか!」

サキ「うーん、ケチだなあ」

犯人「おい! 舐めてんのか、殺してもいいんだぞ!」

犯人、サキの首元スレスレまで刃物を押し付ける。

サキ「きゃあ、助けて! 誰か助けてー!」

ヒーローAの声「ちょっと待ったー!」

登場の音楽が流れる。

サキ「この声は!」

犯人「ま、まさか!」

N「社会の秩序を乱す者がいる限り、私は現れ続ける! 正当な扱いを求め、日頃労働に励む健全ヒーロー、その名もバイトリーダー剣持!」

下手から登場する、レジ打ちの恰好をしたAが傘を持って登場。セリフ時、傘を回す。

二人、唖然。暫くの間。

A「あれ? コイツちょっと服装間違えていないかと思ったそこの君。まったく、ナンセンスだな。私の戦闘服はこれだ!」

犯人「(目をこすって)レジ打ちの方ですか?」

犯人を無視して、唖然とするサキに近づく。

A「君の望みはなんだ? ちょっと野暮な質問かもしれないが、答えてくれ」

サキ「あなたもしかして。……助けて! ここから解放して! 助けに来てくれたんでしょ?」

犯人「なんだと?!」

A「(頷きながら)ういういうい。では君を今から助けてあげよう。(サキにウインクして)形式上、こういうのやりたいタイプでね。しかし、一つ条件がある。」

サキ「どうすればいいの! なんでもするから」

A、合図を出すように指パッチンをする。

N「正当な扱いを求め、日頃労働に励む健全ヒーロー、ひとよんで……」

A「この説明から察する事ができると思うが、僕は賃金をもらわないと働かない」

カッコつけて言うA。

A「さあ、どうする?」

サキ「仕方がない、命に代えられないわ」

タイマーが鳴る。

A「オッといけない、時刻は午後22時を過ぎているようだな」

サキ「ええ、今22時ね」

犯人「まさかお前!」

N「22時以降にしか助けない男」

振り返りかえって、決めポーズするA。

犯人「噂で聞いたことがある、かなりのやり手だと。どれほどの腕前か見せてもらうじゃないか」

犯人・A、見つめ合い、独特な緊張感。音楽。

A「(音楽止まる)ちょっと待て、契約書が先だ。前払いで渡してもらわないと、戦えない体なんだ」

サキ「いくら?」

A「ざっと10万。プラス残業手当だ」

犯人「じゅじゅじゅ、10万円?! おい、ちょっと待て女。警察読んで税金で助けてもらえ! ぼったくりだぞ!」

サキ「10万? 運が良かったみたいね。……ちょうどキャッシュであるわ」

犯人「払うの? 俺が確認するのもなんだけど払うの? この男大丈夫?」

A、笑い出したかと思うと急に犯人に切れる。

A「ごちゃごちゃ、部外者は黙ってろ! (犯人の胸ぐらをつかみ)これはこっちとこっちの話だ!」

犯人、固まる。引いている。

A「(縛られたサキに)じゃ、お客様これ契約書です~」

サキ、紙に名前を書こうとするが、縛られているのでうまく行かない。

犯人、契約書を覗き込むと、目を丸くする。契約書を奪い取る。

犯人「内訳、エンターテインメント代45000円? おいちゃんと読んでサインしてるのか?どちらかというと俺のほうがエンターテインメント代もらってもいいと思うんですけど」

A「(再び胸ぐらを掴み)これは衣装代とかあるんだよ!」

犯人「それバイト先の支給品だろ!」

サキ「ちょっと、私の命がかかってる紙よ! 返しなさい!」

A「俺の10万がかかってる紙だ! 返せ!」

A、犯人から契約書を取り返して、サキに渡す。

サキ「(名前を書いて)うん、人生で一番うまくかけた気がする! じゃあ、思いっきり戦って、コイツをぶちのめして!」

犯人・A、見つめ合い、独特な緊張感。再び音楽。

A「またせたな」

犯人「……」

サキ「イケー! まるでプロレスだわ! いや、お金をかけてるからギャンブルね!」

犯人「うおおお、(体を見回して)金をもらってから、力のみなぎってくる。日頃の正社員からの罵倒、バイトいじめ……。わかるか? 俺の気持ちが。この恨み、ここで晴らさせてもらう! 誰彼構わず、お前に八つ当たりしてやんよ!」

犯人、殴る。ワンパンであっけなく倒れるA。

犯人・サキ「よわ〜」

暗転。

サキとA、罠で縛られて座っている。

サキ「なぜだかわからないけど、(胸に手を当て)ここらへんが腑に落ちてないわ」

犯人「ぼったくられたんですよ。目の前に犯罪者が二人いますよ」

サキ「私情は挟まない主義なんですけど、なんだか犯人さんにそう言われたら、この人が悪い人に見えてきましたわ」

犯人「私情?」

サキ「一瞬でお金がパーよ、どうしてくれるの」

A「負けても責任持たない契約なんで。その代わり一緒に捕まってあげてるじゃないですか」

サキ「なんで負ける前提の話が書いてあるわけ!」 

犯人「ほら、ちゃんと読まないから。あんまよくないですよ、知らない人にお金とかわたしちゃ」 

サキ「くそ、ぼったくれれたわ。今気づいたわ。無駄金かえしなさい! 平等とか訴えてるけど、あなたが一番不当よ! あんなに威勢がよかったのに、よく見たら体も貧相ね。なんだったの、あの時間」

A「これがエンターテインメント代のゆえんですわ」

暫くの間。

A「なんでこんな空気になってんすか。……え、何俺のせい?」

サキ「犯人さん、一度この縄解いてもらっていいかしら。この拳で一度殴らせて。せめて、頭突き、頭突きだけでも!」

犯人「……まあまあ、けんかすんなって。あ、そうだ!」

犯人、下手に一度はけて、弁当を持ち再び登場する。

犯人「あつあつ!」

サキ「ん? ん?」

A「もしかしてそれ!」

犯人、弁当を食べようとする。

A「(食い気味に)あ! その弁当、すぐ向かいのスーパーのっすか? 僕、そこのレジで働いてて。うまいっすよね、これ!」

サキ「ちょっとまって! 弁当? 何勝手に休憩してんの? 私のご飯は?」

A、弁当の中の惣菜を口に入れる。

犯人「え? 許可いる?」

サキ「百歩譲ってそれはいいとして、そいつがなんで唐揚げ咥えてるの!」 

犯人「あ! おまえ! 俺の唐揚げ!」

A「……? だめだったすか?」

サキ「休憩するな! 常に緊迫感もって! ていうか、身動き取れるなら助けなさいよ!」 A「えーむり戦っても勝てないもん。労働時間外も働かせるつもりですか! 訴えますよ!」 犯人「(サキに)こいつを詐欺罪で訴えろ!」

A「何かっかしてるんですか。安心してください、僕は害を与えませんよ」

サキ「捕まった私たちの身にもなりなさいよ! あ〜、おなかすいて死にそう。私もこれまでか~」

ヒーローBの声「ちょっと待ったー!」

登場の音楽が流れる。

サキ「この音楽は!」

音楽、「忘れないぜ地元愛、どんなに遠くても急いで駆けつけます! うっかりに愛されたデリバリーヒーロー、地方剣士」

犯人「お前は!」

犯人とCが対峙し、緊張が走る。 

犯人「けん~」 

犯人とC、抱き合う。 

犯人「遅かったな、変な奴先に来ちゃったよ」 

B「え、マジ? ほんとだ」 

犯人「でもワンパン。シュっと」

犯人、Cにアッパーカットのマイム。

B「(手を挙げ)おおう。ちっと道混んどってさあ、これでも飛ばしてきたんだべさ」

サキ「なに?知り合い?」

N「忘れ物しなければ最強の男」

B、決めポーズ。

犯人「まあ、ダチっつーか?」

B「なかよくさせてもらってます。あ、疑ってますね? ダイジョブです、ダイジョブです! ワイがちゃんと助けますから、安心して下さい!」

サキ「なんだか、最近騙されて、信用ならないわ」

B「こんなのはスピード勝負です。拙速は巧遅に勝るってね。考えるよりも先に動けって話ですよ」

サキ「言っとくけど、こいつ、相当強いわよ、10万をぱーにする男なんだから」

A「八百長でもない限り難しいと思うな、僕は」

B「説明しよう! 僕の体は強化マシーンで出来ている! 博士によるとな、非常に多くのパーツを繊細に組み合わせることで、人類最強の力を出力できる仕組みになっている! とのことだ! たとえば、この膝に装着しているものは、バネがあることでジャンプ力とキック力を強化し、この目からは目からビームが出せる。ここの首は……」

サキ「うそ、毎回助けに来られた人はこの説明聞かされてるの?」

犯人「(Bの説明を遮るように)ちょっとまって、あれは?」

B「(指を指して)あるある」

犯人「電波リモコンの電池は持ってきた?」

B「えっとね(確認する)うわ、わすれた」

犯人「はい、パス!(Bに投げる)」

B「これこれい」

サキ「何この時間」

犯人「彼、地方から急いで駆けつけるから、いつもなんかしら忘れちゃうのよ。初対面のときなんて頭の被り物を忘れちゃってなあ〜。俺に指摘されてから気づくのがあまりにもおかしくって」

B「あれは恥ずかしいわ」

犯人「それほど精密機械を背負って戦ってるってわけだな」

サキ「へーすごい」

サキ、Bと比較するように横に座るAの姿をを見て、鼻で笑う。

犯人「その顔で何も言わないのが一番つらいやつだ」

A「僕10万払いませんからね!」

サキ「こいつを一回黙らせてくれ」

犯人「あっ、靴下間違えてる! 片方だけ地元戦士限定の靴下じゃない!」

B「(雪崩落ちて)え〜」

サキ「なになに、なにか問題?」

犯人「こいつ、完全に揃ってないと戦えないのよ」

サキ「え? 靴下、靴下だよね?」

B「いや、だめなんす……。うわあ、完璧に揃っていればなあ、戦えたのにな……、取り帰ってきます!」

B、走って下手にはける。

サキ「ちょっと! 待ちなさい! せめて警察に電話を」

犯人「彼、うっかりさんだから。おぼえてるかな。まあ、毎回実力を出せないとこが逆に憎めなかったりするんだけどね」

サキ「犯人さん、どの立場なんすか、戦いたいんすか、助かりたいんすか」

犯人「もうここまで来ると俺もわかんないね」

A「ていうか、靴下のこと指摘しなきゃ戦えてたんじゃないんですかね」

サキ・犯人「こいつ、意外と馬鹿じゃない」

暗転。


サキ・A・B、捕まっている。

サキ「くそ、二回目は不戦勝よ! 全然警察が来る気配がないわ。なんで毎度仕事できないやつばかりなの!」

A「君は完ぺきを求めすぎだ」

サキ「お前は金もらってる身分だから一番いうな」

犯人「もう黙ってろ」

A、お口にチャックの動作。

B「ちょっと僕もから揚げください」

サキ「あれ、なんでいんの」

B「実は片方の靴下探したら、洗濯しててまだ半乾きだったんですよ、他のやつも全滅。申し訳ないんで、ここで様子を見ながら待機します。うああ、完全に揃ってればな」

サキ「もういいって、その言い訳。あなたが一緒に捕まっても、何も救いにならないんですけど!」

A「(目をつぶって、寝言のように)電話は?」

B「ん?」

サキ「警察に電話は?」

B「あ、そうでした。(携帯を取り出す)あれ、ここ圏外?」 

犯人「(パソコン作業をしながら)あ〜、ここWi-Fi通ってないから」 

B「うわ完ぺきな仕事」 

犯人「まあ、誘拐犯もだてにやってないやかね」

B「プロフェッショナルだな〜。ぼくも誘拐犯さんみたいに完璧だったらいいのに~」

犯人「全部そろった見たいよ~」

B「僕も全部そろいたいです」

犯人「ねー、そろったら一緒戦おうね~」 

B「はーい」

サキ「なんだこいつら!」

A「うとうと寝てました! (見渡して)あ、何も起きてないか」

サキ、暴れる。

サキ「はなせ、一回こいつを殴らせろ! 大体ね、あんたが一発で助けないから二転三転状況が変わってないんでしょうが!」

A「うわあああ! やめろー!!!」

Cの声「待たせましたね!」

登場の音楽が流れる。

犯人「この声は!」

Cがかっこよく登場する。

N「私が舞い降りし場所、必ず事件あり! 人呼んでアンチテーゼ! 恋も事件も掛け持ち当たり前。その名も、プレイボーイ探偵、ケン1だか、新一だか!」

黒子によって桜が舞う。

サキ「本格的なやつ着た!」

B「これはレアですな! なかなかお目にかかりませんよ」

サキ「業界では有名なのね! しかも探偵ですって! 事件を解決しなきゃあなたの存在価値がないもの!」

A・B「ひゅーゆー!」

サキ「私達助かる見込みしかないわ! 勝ち確だわ!」

A「確定演出来た−!」

サキ・B「ひゅーゆー!」

サキ「あれ、犯人さんの様子がおかしい」

犯人「この女を誘拐した本当の目的。それはお前におびき寄せるためだ。ホントはこんな女一ミリも興味ない! ずっとあなたを待ってました」

C「ははは、そんなことだろうと思ったよ。君の考えは全てお見通しだからね。さあすきなだけ僕を味わうといい」

しっとり系の音楽が流れる。

Cと犯人、仮面舞踏会のような華麗なダンス。

C「もう君を離さない」

サキ「何このプレイ! 壮大な振り?」 

犯人・C「ああそうだ!」

A「噂で聞いたことがある」

N「事件を私物化する男、ストライクゾーンは広めです」

C、ポーズを決める。

サキ「ダシにされてたのよ! 今まで弄ばれた事が最大の罪だわ!」

サキ・A「時間返せ!」

サキ「(Aに)金返せ!」

B「なんて計画的! 完璧な計画が愛を物語っているわ!」

犯人「このシチュエーションじゃないと萌えないんだよ」

A「巻き込まれた身にもなれ!」

サキ・A・B「そーだそーだ!」

A「(遮るように)ちょっと待ってちょっと待って! 気付いたんだけど、これBLじゃない?」

犯人「もうお前黙っててくれ! 殺しはしない主義だかもう殺させてくれ。俺達の恋を邪魔するんじゃねえ!」 

サイレンの音。

サキ「警察だわ」

犯人「う、嘘だろこんなときに!」

C「逃げろ!」

C、犯人の背を押す。

犯人「いいのか? だってお前は」

C「(口に手を当てて)それ以上言うな」

犯人・C、目が合うと頷く。

犯人「待って! (手紙を持って)……これ」

犯人、上手に立ち去る。

C、手紙を大事そうに受け取り、悪を見送る。手紙を読んで笑い、胸に手を当てる。

C「次回の監禁場所。……また、あえるかな」

C、スマホを操作する。

サイレンの音が止まる。

サキ「え、どういうこと? 警察は?」

C「ははっは、これも僕のシナリオ通りというわけさ。お前らには私も一ミリたりとも興味無い! 好きに帰ればいい!」 

C、手紙にキスをしながら、立ち去る。

A「何がしたかったんだ」

B「だめだ。彼のほうが、誘拐犯さんの心を弄んでいるような気がする。これは夢か? 頭がくらくらしてきた。あの気色悪い音楽のせいか?」

B、気分が悪そうな態度。

A「じゃあ、誰もいなくなったし、解散しましょうか」

サキ「……そうね」

三人、縛られている自分の縄を外し、立ち上がる。

A、とんとんとサキの肩を叩く。

A「(サキに)帰る?」

サキ「 帰りますよ! なんですか、誘ってるんですか?」

A「ちょっとまって、違う違う!(手を出して)はい、交通費」

B「うわああああ! もう我慢できない!」

B、Aにワンパン。A、気絶。

B「(吐き捨てるように)まじめに働け! 人生舐めんな!」

B、Aの頭の掴み、立たせる。容赦なくAの全身に北斗百裂拳を食らわせる。

B「あたたたた!」

A「ボケェ」

A、吐いて倒れる。

B、手を見て放心状態。

サキ、倒れたAをつんつんと触る。

B「神様! 僕は初めて人を殺しました! 人を助けに来たはずなのに、真逆の行いをしてしまいした! こうして僕は一生自責の念に駆られることになったよ! バイバーイ」

B、下手へはける。

サキ、Aの財布から10万を取り出し、札でAの顔を撫でる。

A、くんくんと鼻を嗅がせ、札に反応する。

A「(目を開いて)金の匂いだ!」

N「ズクシ」

サキ、浮いたAの首元に二本指をさす。

N「依頼された織田裕二似の男はこいつで間違いない。私情を仕事に挟まない主義なんです、殺しの整体師、サキ(偽名)」

サキ、手袋をはめながら振り返り、決めポーズ。


サキ、挨拶。横から登場人物が来て、全員の挨拶。


完。



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