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【レビュー・十二国記】風の万里 黎明の里

これまで十二国記シリーズは最新巻の「白銀の墟〜」、「魔性の子」、「月の影〜」、「風の海〜」と読んで来ましたが今回読んだ「風の万里 黎明の里」は

ひっくり返るくらい面白かった…





ひっくり返るくらい面白かった。

大事なことなので2回定期。「月の影〜」で王になったはいいものの家臣に軽視されて思うように国を統治できず、勉強を兼ねて野に下った陽子と一国の姫から盗人にまで落ちぶれた祥瓊、使用人を虐待する主人に耐えかねて逃げ出した海客の大木鈴の3人がなんの因果か慶国のとある州にたどり着き、叛乱に加勢することになるという粗筋です。

この3人、それぞれ思い悩んだり自分勝手で無知だったり自己憐憫が過ぎたりと、序盤は彼女らが問題だらけで正直読むのがかなり辛かったことは否定しません。上巻は思うような王様になれず景麒に八つ当たりする陽子に戸惑い、祥瓊の傍若無人な振る舞いに腹立たしさを覚え、鈴の能天気さに頭を抱えることになります。しかも上巻のラストは鈴篇で旅の道中に仲良くなった人徳者の子供、清秀が傲慢な役人によって無残にも…という目を覆いたくなるような展開。「月の影〜」で楽俊に会う前の陽子以上の絶望が波濤の如く押し寄せてきます。でもここで読むのをやめないのはこの話がハッピーエンドで終わるとなんとなくわかるから!そしてその展開を下巻で裏切らない小野不由美先生さすが!!

「カタルシス」なんて言葉をよく聞きますが自分も「煮詰まりすぎてどうにもならない状況に陥ってからの怒涛のラスト」みたいな展開が大好きです。それでいえばこの「風の万里〜」は苦しみや3人の視点からなる別々の物語が絶望の感情を溜めに溜めつつ徐々に慶国に集まってきて出会い、陽子の告白から禁軍叱責によってなにもかもを希望や喜びに変えて解放する感じ!もう最高に好き。「月の影〜」で少し不満だった戦争描写の少なさも今回の風の万里では下巻の半分くらいを使ってたっぷり丁寧に描かれています。そういえばやたら戦闘力の高い半獣として人熊(Skin Changer)が出てましたね。小野不由美先生がJRRトールキンのホビットを意識して書いた可能性が…??

半獣といえばここでも楽俊は暗いストーリーの中に光明を指して存在感を示しています。というかなんだ。お前は夜回り先生か。なんでそんなに道から外れた少女に遭遇するんだ。もふもふのネズミだからいいものの人の姿だったら連れ去り事件だぞ。そうかお前人の姿でいたくないのはそれが狙いか。でも迷子に道理を説くお前のスタイル、嫌いじゃないぜ。

とりあえずこの「風の万里〜」で中島陽子篇は一旦の区切りを見せるようです。次は短編集「丕緒の鳥」を読んでいきます。残るは「図南の翼」と「華胥の幽夢「黄昏の岸 暁の天」そして「白銀の墟 第4巻」のみ。ああもうすぐシリーズを読み終わってしまう…おそらく年内には全て…私は悲しい

ポロロン

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