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Netflixドキュメンタリー「事件現場から:セシルホテル失踪事件」

ロサンゼルスで最も治安が悪い地域、スキッドロウの格安ホテルのセシルホテルに一人旅で宿泊していたカナダ人大学生エリサ・ラムが突然失踪した。連絡が無く心配した家族の通報により動き出した地元警察はホテルの監視カメラの映像から彼女がホテルにまだいると断定し、徹底的な捜索を行うも見つからない。失踪から二週間ほど経過したある時、宿泊客からのある苦情をきっかけに異常な場所で彼女は発見された…という怪事件を追ったNetflixオリジナルドキュメンタリー「事件現場から:セシルホテル失踪事件」をご紹介。

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舞台となったセシルホテルはロサンゼルスのドヤ街に位置する

警察が公開したホテルの監視カメラの映像があまりにも奇妙かつ謎だらけ過ぎて世界中のミステリー好きが様々な憶測を呼んだエリサ・ラム失踪事件の関係者へのインタビューと事件にまつわる様々な情報を寄せ集めた4話構成のドキュメンタリーです。

事件当時は2013年。すでにインターネットは広く普及していましたが、動画内でも語られるように「バズる」という言葉はまだ無い時代に「バズった」のがこの失踪事件でした。

警察が公開捜査に踏み切った際に公開したエレベーター内の監視カメラ映像。エリサと断定される人物がエレベーターのボタンをいくつも押し、外の様子を伺いながら何かから隠れるように身を潜め、かと思ったらエレベーターの外に出て誰かと会話するかのような不自然なジェスチャーをしたのち姿を消す、というおよそ2分半ほどの動画。その間、不思議なことにエレベーターは開きっぱなし…

https://youtu.be/73nFHbnaJc0

この動画はあまりの奇妙さに人々の関心を惹きました。このドキュメンタリーでは映像に魅入られた推理好きのネットコミュニティのメンバーやジャーナリスト、捜査にあたった警察関係者にインタビューを行い当時の様子を振り返ります。

また、このドキュメンタリーで注目されるのが事件の舞台となったセシルホテルです。1920年代に竣工したこのホテルは当時は高級ホテルでしたが世界恐慌を皮切りに日雇い労働者や訳ありの人間の避難所となり、低品質のサービスでも格安で雨風を凌ぎたい人たちの溜まり場と化してしまいました。結果的に地域の治安の悪化に巻き込まれるかのようにセシルホテルの中も暴力自殺ドラッグ売春の巣窟となってしまい、何も知らない哀れな外国人観光客のみ利用するだけの場所となってしまったのでした。インタビューの対象にはセシルホテルの支配人やエリサ・ラムの第一発見者が登場し、事件のおかげで好き勝手に非難される現状を打開しようと主張を行います。

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ホテルの支配人、彼女なりに最悪なホテルを立て直そうと苦労する様子が窺える

また、作中で印象的なのがエリサ・ラムがtumblerに投稿していた内容を追っていくというもの、精神安定のための薬物を常用していたという彼女の精神的な不安定さを浮き彫りにします。

事件の真相をエリサの内面と状況証拠から追いつつも、インターネット文化と彼らの身勝手な行動にも迫ったちょっと変わったドキュメンタリーでした。ちょいこわです

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