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中1英語を振りかえってみて(最終回)

これの続きです]

私はここ数年かけて、日本の中学英語教科書が、時代とともにどんな風に変わっていったのかを調べてきました。

敗戦後の学制改めとともに、英語教育がどんな風に大変身したのか等。

「学校でいくら英語を学んでも/学ばせてもモノにならない、何とかしろ!」の声は昭和の頃から根強くあったのですが、「小学校から教えろ!」論は21世紀に入ってからでした。

そのいきさつについては前に触れたのでここでは省略します。

2021年度より、英語の授業が中1ではなく小5スタートになって、教科書についても根こそぎといっていいくらいの変化が見られます。

ここまで現行の中1英語教科書を順に分析してきました。めちゃくちゃな英文が—―今もなくはないけれど、ずいぶん減っています。その代わり、授業についてこられない生徒さんが増えているのだろうなと感じます。

敗戦後、日本の新制中学校で事実上の全国統一スタンダードとなった英語教科書「ジャック&ベティ」を思い出します。

今ではすっかり忘れられている事実ですが、かつて英語の授業は、中1で始まり中1でおしまいでした。

「ジャック&ベティ」を読み込むと、前半はごく機械的な反復練習で、


後半になるとましな英文テキストが並ぶのです。

おかしいな言い回しもあるけれど、前半に比べればかなりまし

中1後半で生徒の大半は授業についてこられなくなるだろうと、教科書チームは事前に予想していて、それで前半のような、機械的な会話ではない、こういうもっとこなれた会話文になったのだと想像します。

中1生たちがもはやついてこられなくても気にしない、なぜって英語の授業は中1でおしまいだから、中2への接続なんて一部の旧エリート校の課題というわけです。

敗戦より数年の頃なら、そういうものだったのでしょう。

しかし現代はそうではありません。現行「New Horizon」中1版を分析するにつれて、これを最後までついてこられる生徒と、息が切れてしまう生徒に二分されていく様が、脳裏をよぎりました。

「ジャック&ベティ」はその後、挫折者続出という批判を受けて、レベル分けのものが用意されました。「『ジャック&ベティ』?うわーなつかしい」とおっしゃるシニアの方々は、たいていレベル分けされたもののほうを使っています。最初の版はもっと難しかったのですよ。そして中1後半で過半数の生徒が授業をろくに理解できていなかったと想像します。

現代の中学校では、中1ですでに英語の授業から落伍者を大勢生み出しています。これはいろいろな方からうかがっている話です。その子たちをなんとか支えているのが受験産業です。進学塾というよりは補習塾、それに家庭教師派遣業。つまりそういうものに頼る財力がある家の子たちは、そういうものに頼って、そういうものに頼る財力のない家の子たちは、またはあってもアタマが追いつかない子たちは、どんどんふるい落とされていくメカニズムなのだと想像します。

極論するならば、英語の成績を見ればその子の将来は判定できるとされる社会が今まで以上に回り続けるだろうってことです。

「使える英語」への渇望がそこに重なって TOEIC が今後も大繁盛すると、そういうことです。

┐(´∀`)┌


このテーマについては、後日別のところで深く、えぐい話をしていくことになると思います。


ヤレヤレ…

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