エレン先生、そんな英語いいませんよ!
これの続きです。
中1の年明けに、冬休みの思い出語りという体裁で、過去形の英文がデビューするというのが教科書の定石でした。
どうして「でした」なのかというと、2020年度より改まったからです。コロナで世界中大騒ぎでしたのでどなたも気に留まらなかったようですが、あの年度より小5から英語の授業がスタートする制度がスタートしました。過去形は小6後半でデビューです。中1年明けではなくて。
ちなみに昭和後期には中2よりデビューでした過去形。
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現行のより一つ前の代の教科書を見てみましょう。中1の年明けぶんです。
日本の中学校で教えているエレン・ベーカー先生が、おそらく日本に来てから仲良くなった方といっしょに、キモノ姿でジャパンのニューイヤーセレモニーを堪能したと、がっきゅうしんぶんに寄稿なさったものです。
前回紹介したミズ・クックのものに比べると、かなり易しめです。これは2016年度版なので、過去形は中1年明けにデビューです。この大切なデビュー戦で、あまり凝った文は出せなかったのでしょう。
そのせいで、非常にわけのわからない内容になっています。
盛りこみすぎです。「クールジャパン」ぶりをこれでもかと盛りこんだせいで、かんじんのテキストが底抜けしてしまっているのです。
オーミソカやガンタンについて、外国語で外国人に説明するのって、大変なんですよ。
大みそかを日本の伝統的な流儀で友人とすごした。年に一度の特別音楽番組「コーハク・ウタガッセン」をテレビで楽しんで、それから大みそか用の特別ヌードル「トシコシ・ソバ」をふたりでいただいた。
元旦の早朝、ふたりで神社参りをした。参拝者がそれぞれ手を二回叩いて、そして神殿の前で祈りを捧げている姿があった。神々に祈るときのシントーの伝統的なやり方だ。参拝者の列に並んで神社の参道を進み、シントーのやり方で神々に祈った。具体的にいうと、頭上より垂れ下がった綱を軽くゆすって鐘を鳴らし、お金を箱に投げ入れ、二回おじぎして、二回手を叩いて、良い年を祈って、今一度おじぎして、そしてその場を離れるという手順だった。
このくらいでないと、伝わらないです。
その反省からか、現行のものは「クールジャパン」から距離を置いていますね。
この英文もあまりいいできではないわけですが、エレン・ベーカーにくらべればエイミー・クック先生のほうが、まだましな英語をお書きになっています。
しかしそれはこの「New Horizon」教科書の質が向上したのではなく、小5から英語の授業スタートに改まったおかげで、過去形デビューが小学校ですでに果たされていて、そのぶん中1年明けでの過去形が、小学校のおさらい的なものになっているからです。
ことばは悪いのですが、上げ底されているにすぎないのです。
[続く]
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