スメラルドの伝説
ある古い城に
男が一人寂しく住んでいました 。
彼は生まれた頃から憎まれ
叱られながら育ちました 。
そのせいで彼は誰にも
心を開くことが出来ませんでした 。
彼に近付く者に対しては怒り
彼らを遠ざけてきました 。
しかしある日
ある女の子が男の城に現れました 。
ボロボロの服を見に纏ったその女の子は
塀を乗り越えて庭園に入り
彼が育てた花を盗んで行きました 。
男ははじめ烈火のごとく怒り
一晩中庭園を監視していました 。
しかし男が微睡んでいる隙に
また女の子は花を盗みました 。
何度か同じようなことが続き
ある日男は寝たふりをし
そして女の子が花を盗み
去って行く所を見届けました 。
なぜか彼は彼女に興味を持ちました 。
気付かぬ間に彼はその女の子を
待つようになっていました 。
そしてある日彼はマントに身を包み
彼女の後を追いかけました 。
彼は行き着いた先で女の子が
病弱で貧しい女の子だと知りました 。
彼女は花を盗むことでしか
生計を立てられなかったのです 。
彼は彼女を助けたいと思いました 。
彼女に花を育てる為に必要な全ての事
美しい花を育てるという事を
教えたいと思いました 。
しかし彼は彼女の前に姿を
現すことは出来ませんでした 。
もし現れたら彼女は自分を怖がるだろう
愛してくれるはずが無い だって
自分はこんなに醜い見た目なのだから 、と 。
結局彼が出来たことは彼女の為に
花を育てることだけでした 。
彼女が自分の花を盗めるように 。
そこで彼はこの世界で誰も見たことのない
花を作ろうと決めました 。
彼女が高い値で花を売れるように
未知の花を作り始めました 。
城に閉じこもり彼はずっと
花を作り続けました 。
数え切れない失敗の末に
彼は今まで存在しなかった
青く美しい花を創り出し育て
庭園をその花でいっぱいにしました 。
そして彼は彼女が来るのを待ち望みました 。
しかしいくら待っても彼女は訪れません 。
彼は悩みに悩んだ末仮面をつけて
彼女の村を訪れました 。
そこで彼は知ってしまったのです 。
すでに彼女は
この世から去ってしまったということに 。
彼が創り出した花は
" スメラルド " と名付けられました 。
スメラルド 花言葉 : 伝えられなかった本心
But I still want you .
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