1/7(金) 初ゲイバー

この日は帰宅後、お風呂に入る気力が湧かなかった。
ひとりでいたずらにビールを飲んでいると友達から誘いがあった。

指定されたところに行ってみると、そこはゲイバーだった。
カウンター内には口髭を生やした端正な顔立ちの“はーたん“という30歳のゲイがひとり。そのまわりで10人弱の客がおしゃべりやカラオケを楽しんでいた。


“はーたん“はマスターであるにも関わらず、客がカラオケでいれた曲が気に入らなければ「これあたし、やだわっ」と言って演奏中止にしてしまうような人だった。
気に入った客にはおつまみのポテチをどんどん提供するが、あんまり気に入らない客に「おかわりください」といわれると全然あるのに「もうないわっ」と一蹴。端っこの方にいた私と同い年の女の子には、「あんた下品よ。もっと他のとこで磨いてからここにきなさい」とかかなりきついことも言っていた。


彼(彼女?)にハマれるか心配だったが、ラッキーなことに私がつけていた香水が気に入ったらしく、受け入れてくれた。「あなた、それなんて香水?あたしすきだわ。」と言ってもらって嬉しかった。
それにしても彼はずっとぶりっ子していた。何かあればすぐに頬をぷくっと膨らませる。右手でお酒を作るなどの作業をしている間、左手はずっと顔の近くにきゅっと添えている。「両手で作業しろよ」と心の中で毒づくと同時に可愛いなと思った。


次第に、はーたんや周りの人とも仲良くなり、3時過ぎに、はーたんがお店をしめたあと、はーたんとはーたんのお気に入りの男と私の3人でもう一軒行って飲むことになった。
はーたんは2軒目の場所を決める時、近くにしようと言っているのに「あたし2丁目がいいの!」と言い出し、じゃあ2丁目にしようとなると「やっぱり目黒がいいわ、あたし」とかぬかす。私ともう一人の男はふりまわっされっぱなしだ。
2軒目での記憶はほぼないが、はーたんの先輩がやっているゲイバーだった。
はーたんがドンキに行きたいと言い出したので2軒目のゲイバーを出てドンキへ向かう。
はーたんは日曜日に好きな男とデートの予定なので、肌が綺麗になると評判のシカクリームのマスクパックを買っていた。酔っ払って行くドンキは最高に楽しいし、恋する人は美しい。


はーたんはとにかくむちゃくちゃわがままだったが、その分、はーたんに褒められたりハマったりした時はすごく嬉しい。これが恋愛心理学でいう依存テクってやつだ。
大きく感情を揺さぶられると情緒が壊れて、依存してしまう人間の気質をインスタントに体感したい人は、はーたんのバーに行けば良い。


来世は男として生まれ、わがままな可愛い女に振り回されてボロボロになるのも悪くないなと思った。

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