なきごえ




       ◇   ◇   ◇


 ──あの子の吐息は薄暮はくぼを連れて 名残り雪よとさよなら告げる
   黄金こがね色した稲穂の園が 風にでられうっとりげば
   となりの仲間に寄り添いながら 子守唄のよう美しく 
   少女の心を和やかにして またいつの日かと微笑ます

   ぴょんぴょんするうち景色が変わって 清んだみずうみ芝生が囲う
   夜の小雨に少女が泣けば メダカやオタマが方向転換
   水面の屋根のアメンボたちも 警備ついでの遊泳飛行
   悲しまないでとスイスイ寄って 涙の種子たねとパクパクおどる

   少女は裸足をそっと濡らして 邪魔はしないよとちゃぷちゃぷ涙
   それ見たオイラは指先乗って こっちにおいでとゲコゲコ笑う
   オイラは小雨をい潜りつつ ときどきチラ見が専売特許せんばいとっきょ
   ぴょんぴょん跳ねれば草木が笑い そよ風追い風さらさらひらり

   うしろの少女がツッツと涙 まだまだ足りないオイラの声援
   少女を誘ってたずねた先は 彩り豊かな花の道
   春が来たぞと知らせてやれば 花びらの陰でお茶啜ってる
   チョウやミツバチ羽をふるわせ 少女に向かってこんにちは

   するとどうだい木洩こもれ日の朝 少女を照らすよゆっくりと
   欠損めげたいときはいつでも頼りな ここに置いてけ昨日の君を
   君のためならどんちゃか跳ねるよ 冗談だらけのお祭りだい
   悪口わびしさなんでもござれさ オイラがぺろりだ胸いっぱい

   へどろみたいな世の中だけど ここへ来たならもう安心だ
   恋するものはポッケにあるよ 気づくといいな届くかな
   こんなことしかできないけれど かっこ悪いかもしれないけれど
   君に笑ってほしいから 応援するよいつまでも

   あのときごめんね抱きつけなくて 許せなかったのオイラの弱さが
   君にあこがれ真似してみたけど なれなかったよヒーローに
   なんてくじけるオイラじゃないぜ ニッと笑えばソロでも歓声
   悲しい昨日はこれで終わるさ 生憎あいにく天気は悪いけど

   君が笑うよ大声あげて それ見たことかと腕自慢
   落ちてる枝も指揮棒代わりさ 明るく整列 さあ歌おう──


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