見出し画像

濱帯プロジェクト - 素材選び -

さて、濱帯プロジェクト、こつこつ動いています。
1枚帯の濱帯はカラー展開のものと、無地の「さらし」を使ったものを考えていますが、今回は無地の「さらし」の選定状況について書きます。

さらしとは

さらしとは、いわゆる「さらしもめん」のことです。
日本には着物の文化がありますが、この着物のベースにもなるのがさらし(綿織物を漂白したもの)です。
「着尺巾」というのが、着物を仕立てるときの一着分の生地の反物のことですが、普通は幅約37cmで長さ約12.5mを大人1人分として織ったそうです。
そんな背景もあり、さらしもめんは35cm前後の生地幅で、1反が約10mのものが基本です。

一般的な生地屋さんで販売されている生地はいわゆる「洋服」用のもので、生地幅は通常は110cm程度、1反で50m程度あるものもあります。
そもそも日本の伝統的なさらしもめんとは生地幅も1反の長さも全然違うんです。

身近なところだと、手ぬぐいもさらしもめんを使っています。
さらしもめんを注染や捺染などの方法で染めて、約90cmの長さに仕上げているのが手ぬぐいですね。

さらしもめんの違い

さらしもめんにも種類があります。
手ぬぐいのジャンルでは「文」とか「岡」というような呼び方で区別しているものもあります。「文」は「総理」と呼ばれたり、「いろはにほへと」から「イ」とか「ロ」と名付けて区別していたりします。
この違いは主に「糸の細さ」と「密度」になります。

文や岡などの呼び方で規格をわけているものは一部ではありますが、目安として以下のように分けられます。

文・・・20番手の糸を使ったもの
特文・・・20番手の糸を使い高密度に織ったもの
岡・・・30番手の糸を使い高密度に織ったもの

どれが優れているというものではなく、用途によって求められる糸の番手や密度は異なります。吸水性や速乾性がある文はふきんに適していて、染め上がりの綺麗さを求めるなら岡が良いとか。
布おむつにしたときも、肌触り重視なら岡ですけど、もうちょっと生地に厚みが欲しいなら文のほうが良いとか。
ちなみに細い糸で高密度で織ったほうが糸を多く使うので価格は高くなります。普通に考えれば目付も多くなります。

「濱帯」に最適なさらしもめんとは

今回企画する「濱帯」は抱っこやおんぶに使うことを想定するので、通気性はもちろん、5Mの帯を洗濯することを考えると、やはり乾きやすさは欲しいですよね。また、細番手で高密度に織ってあるものは生地の原価も高くなるので、日用品として相応しいものを選ぶ必要があります。
となると、一般的に言われる「特文」とか「上総理」に近い品質が望ましいと考えました。肌触りも、生地の厚みも程よいです。
結論、20番手で高密度に織っているさらしを選定します。

選定材料として、実際に産地から生地を取り寄せて以下の点を比較しました。
・手触り
・織密度(インチルーペやデンシメーターで目視)
・検査機関で織密度検査
・価格
・生産背景

ちなみに画像の上にある横長のケースに入っているものがデンシメーターと言われるもので、手前の小さいものがインチルーペというものです。
インチルーペは1インチ当たりに経糸と緯糸が何本あるかを目視で確認することができます。

例えばこんな感じに見えます。
左(緑)のほうが右(赤)より目が細かいことがわかると思います。
ちなみに試験機関での織密度の検査では、以下の通り。

緑:1インチ当たりの経糸49.3+緯糸51.3=100.6
赤:1インチ当たりの経糸49.3+緯糸51.3=90.6
1インチの打ち込み本数に約10%の差がありますね。

あとは実際の肌触りや質感(ハリやなめらかさ)、価格や生産背景などを総合的に判断することになりますが、今回の検査をもとに、濱帯のさらしもめんの品質基準の一つに、参考数値として1インチ当たりの打ち込み本数100本という基準を設けてみようかと考えています。

デンシメーターでも計測(おまけ)

ちなみにデンシメーターで計るとこんな感じになります。

ガラスの物差しみたいなものなのですが、不思議なことに生地の上に置くと波紋が現れます。この波紋の頂点が本数になります。
経糸と緯糸は一度には計測できないので、経糸を計測する場合は目盛の細線が経糸に並行するように置きます。上の画像だと64本ですね。
ちなみにこれは特岡の生地で、試験機関で計測すると64.3なので、結構精度が高いです。

さらし生活はじめました。

今回のプロジェクトで、産地の職人の方に取材をしたり、商工会を通じて生地のご提案をいただいたり、その際に基本知識や製造工程、産地など様々なことを教えていただいています。
繊維業界に20年以上いますが、小巾織の生地との出会いは今回が初めてで学ぶことが多いです。
そしてさらしの魅力もたくさん感じています。
長男が小さかったことの布おむつ時代やおむつなし育児も思い出しました。

この布おむつもさらしもめんです。
織り方はドビー織りというもので、ちょっと凹凸があるような織り方です。
うちではおむつカバーは使わず、お手製のゴムバンドで留めるだけ。
「あ、するな」と思ったらホーローの鍋が彼専用のトイレで、おむつなし育児もしていました。

洗濯が間に合わないときは適当にタオルを使ったり、バーバリーのハンカチをぜいたくに使ってみたり。布おむつの使い方を経験しておくと、いざという時に応用がききます。懐かしい思い出です。

布は使い捨てではないこと、なんか温かみがあること、モノを大事に使う気持ちを思い出させてくれるなど、いろいろ良いこともあります。
うちでは台ふきんは不織布のものを使うことが多かったですが、今回を機にさらしを使うことにしました。汚れることを恐れず贅沢に、使った後はその場で簡単に洗って、繰返し使っています。
反物で買えば長さも自由にカットできるので、使いやすいオリジナルふきんが簡単に作れます。

良いです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?