マガジンのカバー画像

絵空事 -前日譚-

77
自創作『絵空事 -十六夜月と銀の翅-』シリーズの【-irreal-】の前日譚にあたる物語たちです。【蒼ノ章】【白ノ章】【紅ノ章】【玄ノ章】【黄ノ章】に分かれております。
運営しているクリエイター

#黄ノ章

絵空事 -llorosa-

木々のざわめく音がして、静かに目を開ける。 遙は、隣で眠っている。 まだあどけなさの残る…

2

絵空事 -belleza-

私は、その日のつとめを終え、どうやら疲れきっているらしい身体を引きずりながら、どうにか山…

2

絵空事 -leve- 第1話「乖離」

とある一族に伝わりし伝承 されど偽りか真かは、当事者にしか判らぬ噺 *** 夢と現の間(あ…

2

絵空事 -leve- 第2話「流転」

その時玄鋼は、ちょうど見廻りを終え、帰ってきたところでした。 「言伝、だと?」 「はい…。…

絵空事 -leve- 第3話「黄雲」

銀翅の食事は、すぐに終わりました。 暫くの間、何も口にしなかった銀翅ですから、突然大量の…

1

絵空事 -leve- 第4話「遺贈」

銀翅はまた暫く、座敷牢――もとい隠し部屋で過ごしました。なぜ牢ではなくなったかというと、…

絵空事 -leve- 第5話「餞別」

――明くる日の、晩。 銀翅の姿は蓮華の部屋に在りました。 面があるのだから声だけでも掛けたいと、銀翅が珍しく自ずから願い出たのです。 玄鋼は如何にも渋々といった様子で、それを許しました。また、その時間も厳密に定められました…。 銀翅は深く息をして、出来るだけ音を立てずに、衝立のそばへ膝をつきました。 ――衝立の向こう側からは、微かな寝息が聞こえます。きちんと眠れぬ日もあるらしいと聞いていた銀翅は、今日はどうやら大丈夫らしいと安堵しました。 銀翅はおそるおそる、その顔を覗

絵空事 -leve- 第6話「山神」

それから玄鋼は、何事にも以前より懸命につとめるようになりました。 蓮華も以前よりは健やか…

3

絵空事 -leve- 第7話「蜜語」

「玄鋼様! ようこそ御出でくださいました…。」 「直々に御出で下さるとは。有難う御座いま…

絵空事 -leve- 第8話「蒼青」

『――久しぶりだね、葵。』 そう言って悠然と微笑んだ銀翅でしたが、その表情は狐の面に隠さ…

絵空事 -leve- 第9話「畏敬」

昔、とある山に一匹の蛇がいた。 その蛇は不思議な力を持っていて、その蛇の力によるものか、…

1

絵空事 -leve- 第10話「残雨」

――あくる日。 「蛇の伝承、ですか?」 「そうだ。悠殿であれば、何か存じているのではないか…

絵空事 -leve- 第11話「朔風」

『――わたしを呼ぶのは、誰ぞ』 幾度目かの呼びかけののち、気怠げな声が響きました。 「私…

絵空事 -leve- 第12話「暗涙」

――それから過ぎていく穏やかな日々に、銀翅もやがて少しずつ、飽きてきたようでした。 それを見計らったように、十六夜は時折、遙や玄鋼のみならず、蓮華をも山に招きました。 無論、彼らが村に帰る時には、彼らの過ごした穏やかな時の記憶は削除されてしまいます。 互いに喜びあう再会であることから完全に削除するのは難しく、十六夜はそれを夢としてぼかす事で、宵の夢としたのでした……。 銀翅の姿が見違えるほどに老いた頃には、若き日の自身に似せた式神に『遣い』の役割をさせました。 ――『遣い