絵空事 -vana- 第3話「落ちた穂」
――辺りはまだ暗い。
ゆるやかに目を開けると、いつものとおり、誰もが眠っていた。
ごろりと寝返りを打ち、天井を見上げる。
――起きて何かをすると、二人の眠りを妨げることになるかもしれないな…。
そう思い至り、そのまま目を閉じて、外からの音に耳を澄ました。
木々のざわめき、風の音。――それでも妙に静かなのは、ひょっとすると雪でも積もっているのかもしれない。
寒くはあれど、冬は嫌いではない。
何事もなく、静かなのは好いことだ。冬は、よりその静けさが際立つ。
獣のうちにも、