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幾多の困難を乗り越え、ようやくその街に着いた。 「お兄さん、どうだいこれ、安くしとくよ」 「必要ない」 【星降る街】のどこにでもありそうな露店で勧められたのは、奇妙な色をした豆のような粒である。 店主曰く、一応珈琲豆の一種なのだというが、空色をした珈琲豆など存在しないと、私の中の常識が告げている。 「珍しいでしょう。普通に暮らしていては、到底お目にかかれない珍品でして」 「だから必要ないと言っている」 「そう言わず、一杯だけでも…。天にも昇る気持ちになれますよ」 はっきりと断