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36歳は中学生の漢字テストを解けるのか?

と、と、ととととと解けるに決まってんだろ!


義務教育なんだが?

「世紀末」という響きがなつかしい2000年、私は中学を卒業した。
想像していただろうか。
21年後、手書きをほとんどしない生活になることを。

書類はパソコン、メールもパソコン、プログラミングはもちろんパソコン。
LINEはスマホ。検索も注文もスマホ。
ペンを握ってインクを走らせる機会は激減した。

そんな毎日でも、たまに手書きが必要になる。たとえばホワイトボードで説明するとき。

「この書類をフクセイするとき…フクセイ…フクセイ…」
「文字をサクジョする前に…サクジョ…サクジョ…」

予測変換のぬか漬けと化した脳は、こんな簡単な漢字も絞り出せない。
勉学に打ち込んだ中学時代はバーチャルだったんだろうか。なんだか、漢字力が年とともに後退してるような…

いや、後退などしてるはずはない!
なぁに、普段は油断してるから漢字が出てこないだけだ。ちょーっと本気出せば余裕で書けるって!

よし、証明するために中学の漢字テストを解くぞ!

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本日挑戦するのはこちら、受験研究社の「ハイクラステスト 漢字・語句」である。

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数十ページにわたって漢字の書き取り問題が掲載されており、1ページには27問が載っている。
適当なページ(上に載せたものとは違うページ)を選んで解いてみよう。

ただし、普通に解いたのでは楽勝の極みなので、ルールを追加。

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制限時間は3分とする。
3分で27問。1問あたり7秒弱で解かないと間に合わない計算だ。「どんな字だったっけ…」と迷ってるヒマはない。フィギュアスケーターのような滑らかさで解答欄を埋めていく必要がある。

だが恐れるには足らない。こちとら社会人を何年やってると思ってんだ。シーフードヌードルの前で3分待った実績なら豊富にある。3分の戦いに負けるわけがないのだ!

それではタイマーをセットして、鉛筆を握り、よーーーーーい、

スタート!

書け書け!3分1ラウンド1本勝負だ!

1~4問

ジョケイ、イショク、オしむ、オクる、
おおスラスラ書けるぞ!やっぱり楽勝じゃないか!頭が中学のスピードを取り戻している!

ゆるぎなき自信をまとって疾走する鉛筆。
だが、快進撃は問14に潜む伏兵にさえぎられた。


飼っているニュウギュウを草原に放つ

…ふむ。

飼っているニュウギュウを草原に放つ。

どうしよう、問題文がおもしろいんですけど。
「ニュウギュウ」とカタカナで、かつ太字で書かれると、粘りつくような語感が念押しされて深々と心に残る。声に出して読みたくなる。

飼っているニュウギュウを草原に放つ。

アンコール。

飼っているニュウギュウを草原に放つ。

…ダメだ…おもしれぇ…だんだんクセになってきた…
ニュウギュウを…ニュウギュウを…うひひひひひ…

こうなると止まらない。ニュウギュウが出産するかのごとく、気になるポイントが増えていく。
そもそも、この問題文は何なんだ。「飼っているニュウギュウを」って、おれニュウギュウ飼ってねぇよ。なんで飼ってる前提なんだよ。そしてニュウギュウを草原に放ってるけど、そんなことしてニュウギュウは逃げないのかよ。ちゃんと柵で囲ってるか?

…はっ!
無駄なこと考えてる場合じゃない、漢字を書かないと!
そうか、問題文にツッコませて時間をロスさせる策略か!まんまとハマってしまった!

大幅に遅れをとってしまい、必死で解答欄を埋めていく私。
しかし、問題文から余計なイメージがふくらむ症状はどんどん深刻化する。
次なる伏兵は、

きみの食欲はモウレツだな

うひぃー!モウレツな食欲て!どんだけ大食いなんだよ!
思考回路が9割カービィにもってかれるわ!カービィがモウレツな速さでニュウギュウにかぶりついとるわ!

挙げ句の果てには、

病気とイツワって学校を休む

イツワっちゃダメだろ!教材がズル休みを推奨するなよ!病気とイツワって授業サボったカービィがニュウギュウモウレツな速さで丸呑
(ピピピピッ!ピピピピッ!)

あ。

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幻のカービィアニメ没プロットを妄想していたら3分たってしまった。27問中25問を解いたところでタイムアップ。残酷な結果である。
言わずもがな、ニュウギュウに気をとられたのが敗因だ。あのニュウギュウに…うひひひひひ…

さあ、笑ってないで答え合わせするぞ!赤ペン持て!


答え合わせ

女系

問1は危うげなく正解。まあこの辺は問題ないでしょ。無敗伝説が始まったぜ。


移植

無敗伝説が終わったぜ。
植物の「植」でよかったのか。小学校で習う漢字じゃないか。
「心臓イショクのようなハイレベルな手術が初歩的な漢字で済むはずがない」と思い込み、余計な「ノ」をつけてしまった。
手術の難易度と漢字の難易度は比例しない。勉強になったな。


企画

いや、これは違うんだ。ちょっと聞いてくれ。
キカクって見た瞬間「規格」が浮かんだんだよ。仕事でよく使う熟語なんだよ。それを書いちゃってから気づいたけど直す時間が無かったんだよ。決して「わかんないからカタカナの "キ" でごまかそう」じゃないんだよ。


有頂天

えっとね、これは普通に間違えた。「ウチョウテン」で宇宙まで届くハイテンションを連想しちゃった。
あと、これを解いてるときは既にニュウギュウカーニバルが開幕してたから。頭の中はニュウギュウでギュウギュウだったから。ニュウギュウをかき分けて漢字をサルベージしてたから。

ちなみに、そのニュウギュウは、

ニュウギュウ答え合わせ

あれほど翻弄されながらも正解した。見ろ!ニュウギュウには勝ったぞ!

闘牛士かよ。


結果

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27問中、正解22問、不正解3問、時間切れ2問。正答率は81%であった。時間制限とニュウギュウトラップがあったことを考えれば、健闘した方だと思う。

しかしそれ以上に、ニュウギュウからあんなイメージが膨らむとは思わなかった。中学時代の私だったら正解を稼ぐことしか考えず、ニュウギュウなどサラッと書いてスルーしていただろう。
あの頃は成績表ぐらいしか自分のよりどころがなく、テストの点数がそのまま我が身の人間としての点数、とまで信じ込んでいた。心に遊びが皆無だったのだ。

ひるがえって今の自分を見てみると、いろんなものを片っ端からおもしろがっている。

こんなことすらネタにしている。

テストで浮かび上がった結論。
中学の頃と比べて、おもしろがる技術が向上した。
36歳の私は、人生に笑いを散りばめる術を習得したのだ!


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【飼っているニュウギュウを草原に放つ】

うひひひひひ…


お金をください!