CDを合法的に布教しようとしたらダチョウ倶楽部になった
昨年日本で開催された、ラグビーワールドカップ2019。
その「選手入場曲」を聴いたことはあるだろうか。
大地を震わすような太鼓から始まり、戦う決意をまとわせて盛り上がるシンフォニー。強者の登場を予感させる勇猛な楽曲である。
この曲を作曲したのが、下村陽子さん。
多方面で活躍している作曲家だが、特にゲーム音楽の実績が有名だ。
「ストリートファイターⅡ」、「キングダム ハーツ」、「ファイナルファンタジーXV」。
そして、「スーパーマリオRPG」。
私が #はじめて買ったCD は、「スーパーマリオRPG」のサウンドトラックである。
※以下「マリオRPG」と書きます。
マリオRPGとは
1996年、スーパーファミコン用に発売されたRPG。
マリオのゲームだから当然任天堂が作った、かと思いきや、任天堂とスクウェア(現スクウェア・エニックス)の共同開発だ。下村陽子さんも当時はスクウェアの社員だった。
アクションゲームさながらのジャンプ力で、マリオが世界をかけめぐる。
クリボーやノコノコといったおなじみの敵キャラに加え、いい意味でマリオらしくない、異世界感のある悪役たち。
多彩なステージに酔いしれ、休む間もなく投入されるギャグに笑う。
夢中になったフクイチはいつしか、BGMにどっぷり浸かっている。
そりゃそうだ。下村漬けになってるんだから。
幻想的な曲、カントリー調の曲、バロック風の曲、戦闘BGMとは思えないほど楽しさに突き抜けた曲、これぜんぶ下村さんだから。
気づけばサウンドトラックを手にしていた私。
CD同梱の冊子には、下村さんの解説、というか裏話が載っている。
これがまた、作曲中のひとりごとをそのまんま起こしたような、素直すぎる文章なのだ。呑みながら書いたんじゃあるまいな、と疑うぐらい。読むほどに下村さんが好きになる。
音楽をバックに読むのが至福の時間だった。
何度も読み返して冊子が破れ、セロテープで補強する始末。年月を経て梅酒みたいな色になってる。
曲の話に戻ると。
マリオRPGをプレイしたことがなくても、マリオの曲のアレンジはしばしば登場するので、聴くと「あっ、これ知ってる!」となるはず。
そして、下村陽子という作曲家の幅広さに驚くはず。
興味があれば、ぜひ一度聴いてほしい。
…どうやって?
マリオRPGの音楽を聴くには
幾多の音楽配信サービスが咲き乱れる昨今だが、このCDはApple Music、Spotify等には存在しない。
ソイジョイをかじりながらスマホをポチッ、では聴けないのだ。
私の知る限り、今、マリオRPGのBGMを聴く方法は二つしかない。
ひとつは、ゲームをプレイすること。
「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」に収録されているので、今から遊ぶのは難しくない。
しかし、ゲームしながらだと音楽には集中できないし、目的のBGMが流れるところまで進めるのも時間がかかる。
さらに、マリオRPGにはサウンドテスト(BGMのみを再生するモード)も無い。
今遊んでもおもしろいゲームには違いないのだが、BGMを聴く用途としては厳しいだろう。
よってもうひとつの方法、「サウンドトラックを入手する」しかないのだが…
amazon 74,855円(※2020/09/27現在)
メルカリ 30,000円以上
たっか。
CDの値段として常識外れなのは言うまでもない。
長らく再販されていないため、中古市場やオークション市場ではプレミア化しているのだ。
ちなみに、私が買った当時の値段は税抜2,718円、税込2,800円。(そうそう、この頃は消費税が3%だった)
それが現在、10倍以上に高騰しているわけだ。
欲しがっている人には申し訳ないが、私にとって、この状況は正直うれしい。
レアなアイテムを定価で買って持ってるのが自慢、というのもなくはないが、それだけじゃない。
いくら入手困難なCDでも、曲の人気がなければこんな高値はつかないはず。
自分の好きなアーティストが、世間的にも評価されているのがうれしいのだ。
だが、同時にちょっと困ってもいる。布教しにくいじゃないか。
これが3,000円ぐらいで買えるようなCDだったら、「興味があれば聴いてみてね!」と気軽に書けただろう。
数万円のCDを買ってください、とはなかなかおすすめできない。最新のプレステにも匹敵するんだから。
プレミア品を所持している誇らしさは、あくまでも個人的な愉悦にとどまるものだ。
できれば誰かに聴いてもらって、喜びや楽しみの輪を拡げたい。
そう考えるとむしろ、「任天堂さん普通に再販してくれ」とお願いしたくなる。いや「スクウェア・エニックスさん」か?どっちだ?
推測だが、人気ゲームなのにCDがずっと再販されないのは、こういった権利関係の難しさもあるのかもしれない。
さて、ここまで読んで、こんなことを思わなかっただろうか。
「YouTubeとかに上がってないの?」
検索したらわかるので言ってしまうと、音源はYouTubeにアップロードされている。
ただし、任天堂やスクエニの公式チャンネルではない。投稿者は素性のわからぬ匿名アカウントだ。
これは…著作権の侵害では…?
ゲーム実況動画など、任天堂のゲームを使用したコンテンツの投稿に関して、任天堂はOK or NGのガイドラインを示している。
これによると、ゲーム実況やゲーム紹介など、投稿者のオリジナリティが発揮される場合はおおむねOKなのだが、
ゲームのサウンドトラックやムービーシーン、イラスト集等をコピーしただけの投稿は、お客様の創作性やコメントが含まれないため、ガイドラインの対象として認められません。
ばっさり。
そしてnoteでは、利用規約で「他者の著作権を侵害するもの」の掲載が禁じられている。
いくら曲を聴いてほしくても、動画のリンクを貼るわけにはいかないのだ。
しかし、直接リンクを貼らずとも、そういう動画がYouTubeにあると書いた時点で、違法コンテンツへの誘導とみなされるんじゃないか…?
よし、ここはビシッと言っておくぞ。
いいか、検索するなよ!
YouTubeを「スーパーマリオRPG BGM」で検索するなよ!
絶対に検索するなよ!
ダメだ、書けば書くほど「押すなよ押すなよ絶対に押すなよ構文」になってしまう!ダチョウ倶楽部が止まらない!
ちくしょう、違法アップロード動画め!訴えてやる!
合法的に布教したい、でも持っていたい
ダチョウ倶楽部には一旦座ってもらって、合法的に布教する方法を考えてみる。
思い出深いゲームだし、下村陽子さんは好きだし、CDは自分のものとして持っていたい。
だけど、興味をもった人には聴かせてあげたい。そんなにたくさんの人でなくていいから。
じゃあ「個人TSUTAYA」できないかなあ。
Webでレンタルを受け付けて、申込者にCDを郵送する。
で、決められた期間内に郵送で返却してもらう。
再販されないCDを所有しつつ広める方法として、私にはこれしか思いつかない。
妄想なんだから、いくらでもワガママを言わせてもらおう。
これだけだと私の住所がバレるし作業的負担も大きいので、代行してやってくれるサービスがほしい。
① サービスのサイトで、CDレンタルのリクエストを受け付ける
② リクエストがあったら私に連絡が来て、私が都合のいい日時を入力する
③ 指定日時にスタッフが私の家に来て、CDを預かり、リクエストしてくれた人に届ける
④ 逆の流れでCDを私に返却する
これでどうだろうか。
CDに限らないだろう、本やDVDでも。
貴重なものを持っていて手放したくはないけど、他の人にも魅力を味わってほしい。
少しだけの人でいいから、「いいよね」って一緒に言いたい。
そう思ってる人、いるんじゃないだろうか。
だって、このCD私がずっと持ってたって、私がうれしいだけだから。
私がうれしいのは大事だけど、そのままじゃもったいないから。
おそらく全国にいるであろう、楽しさのおすそ分けをしたいアンパンマンたちの想いを、「個人TSUTAYA」で叶えられる気がする。
そういうサービスあったらいいと思うけど、いろいろ課題あって面倒そうだなあ。セキュリティとか人件費とか。
誰かやってくれないかなあ。
「俺がやるよ」
「俺がやるよ」
「俺がやるよ!」
…じゃあ私がやるよ。
「どうぞどうぞどうぞ」
おい!
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