1room
文章を執筆すること、書いた文章を推敲すること、推敲した文章を公開すること、これらの過程全体を通じた、書くことのシステムを考えたい
坂口恭平さんのテキストを引用しながら、そこに移るイメージを鑑賞しようという試み
聞き取り
その日にやりたい企画だけを詰め込んだ好みたっぷりの新聞
車に乗る。後ろに座る。 SNS。 運転席に父親。 「こうちゃん、何調べてるの?」 「トレジャーファクトリーかなー。前に売ったのあそこだったじゃん。思ったよりも売れたし。」 「そうやな。」 助手席に母親。 荷物が乗っている。 ガレージが開く。晴れ。 出発。 細い道を曲がる。 知らない曲がかかる。 二人が話す。 リサイクルショップに到着。 荷台をもらい、運んだ。 全部で7点。 査定が終わるのは40分後。 車に乗り、ワークマンに行く。 店頭のものに触れる父
2024年3月。鳥取に旅行する。 目的はゲストハウス。写真撮影禁止の場所。 大阪からバスで行く。 始発から乗る僕。あと夫婦。 待合室で小話する。 お菓子をくれる。 お礼を言う。「とんでもない」。 道中、ひんやりした。 雪。反対車線。溝にはまった車。 駅から電車に乗る。 発射まで1時間。 最寄駅に到着。温泉街のアーチ。 ゲストハウス。 受付。居心地のいい距離のスタッフ。 ドミトリーに入る。 ちゃぶ台真ん中、二段ベット三台。 畳部屋。 窓を見ると晴れていた。 受
書いて評価されたい。そんな気持ちを持ち過ぎないようになった。 毎日、文章を投稿していた。いいねはいくつ、いいねはいくつ。そればかり気にした。もちろん、思うようにはいかない。ただ、どんな投稿にも、一つはいいねを押してくれる人がいた。励みになった。 でも、ある時、投稿するのを辞めてしまった。やらなくていいと思った。発信し続ける意味が、あまりないように思えた。 当時は一人暮らし。週3日のアルバイトで、月7万で生活していた。それまで会社勤務だったが、自由な時間が欲しいと辞める。
ずっとずっと暗くって。そこには誰もいなくって。 それでも誰かを呼んでみて。じっとじっと待ってみて。 じゃあさあ、何が聞こえたかい?きっと何も聞こえない。 いいのさそれで、待ってて待って、どうにか待って。 そうそう、バスがやってきた。光のお目目のバスが来た。 じゃあさあそこに乗っちゃいな。怖くないよ、乗っちゃいな。 それでどこまでいくんだい。きっと遠いところまで? それじゃあボタン押せないじゃん。じゃあなんで? 出発しちゃうよ、うかうかすると。車掌さんがみているよ。
逃げたと思ったら大きくなって吸い込んでくる。空中簡易竜巻。
生暖かい破片混じりの液体がどろっと、次元の裂け目から垂れてくる。
投稿する前の推敲、投稿した後の推敲文章を書いたら、推敲する。 とは言っても、僕の場合は本当に簡単にする。 読み返して、言葉や意味、イメージが重複するのを消すぐらい。あとは、脱線していれば削除する。それを流し目程度にやって、投稿する。 人によっては、投稿する前に何度も見直し、磨きをかける方もいる。 僕もかつては試みていた。けれど、もう一度する気にはなれない。 面倒くさい、ということもあるし、自分の文章を否定してしまいそうになるのがイヤ、ということもあるし、一番の理由は、今日
それで、どうしたの? ガヤガヤうるさい食堂で僕は問われている。 いやぁ。でも、渡せなかったんです。 えー。先輩はのけぞり返り、わざとらしい声をあげる。 じゃあ、こうしようよ。 バックから取り出した紙一枚と、シャーペン。校内の様子を書いていく。 今、ここにいるのが僕たちね。 はい。 それで、あなたが行きたいところがここだと。 はい。 じゃあ、どういくのがいいと思う?順序的に。 えー、それはまず、ここで冷えかけているカレーを食べることですよね。 いや、食べてからだよ。 じゃあ、持
メモの二種類:物体としてのメモ/消去していいメモ普段から自分でメモを取っている。 そこには、歩いていて思ったことや、家にいるときの悩み事、本を読んだ時に感じたことなどが書かれてある。 それらの言葉は対面を意識していないから、僕に向けられた言葉になっている。しかも、その時の僕に向けられた言葉だから、後になるとよく分からない言葉も多い。 そういうメモ済みの言葉は二種類に分けられる。何かよく分からない物体としての言葉。もう必要がないので消去していい言葉。 前者は先ほど述べた通り、
ここで何があったんですか。 みりゃわかるだろう。火事だよ火事。 でも私には見えないですし。 わかるでしょ、俺の肌みればさぁ。 ええ、まあ確かに、爛れています。 ったく、本当に痛かったんだから。知ってる?火傷で死ぬって気持ち。 いや、わからないです。 急だったよあれやぁ…。ストーブかな。冬でもねぇのによぉ。火が付きよったんだ。知らないところでね。台所に置いてたかな。きっと、そこのガスとなんか引火したんだろうと思うが、まあわかんねぇ。気づいたら周りが火の海でよ、逃げ場なかったね。
手元に小さな箱がある。 縁には埃がついている。 払ってみてもキレイにならず。 布巾を濡らして拭ってみる。 包むよう全体を触って。 思った小さい感じ方。 内に隠れる大きさ。 強いとそれは潰れてしまう。 へしゃげたって出てこない。 悲しい気持ちだけが残るだろう。 だから私は閉じた手揺らし。 角打つ感触確かめる。 ここは落ち着く気持ちがあって。 心臓は身体の外に出せてしまうほど。 操れてしまう気持ち。 支配したいわけじゃない。 支配されたいわけじゃない。 重力があってこそ、バランス
船を漕いでいた。波に打たれ、重心を保って、腕を前に運んで引いた。今朝、港で吐いた息の先。視線は月光が差し込んだところに落ちていた。 魚になったかと思う。海にいた。船が転覆したのだ。すくわれてしまった。海がコンクリートだと思った。漕ぎ棒は垂直に突っかかると思った。もたれたさ。船がなくても歩けると思った。けれど到底勘違い。沈んでいった。 泡が身にまとう。呼吸はできない。身体に針が刺さった。一本だけを抜けばよかった。慎重に選び取り、よくよく痛みを観察する。皮膚の下にまで及んだ針
歩いていると、空間の切れているところがある。ヒラヒラしていて、奥から風が入ってきていた。
できれば毎日、何かしら文章を書きたいと思っている。 書くというのは僕にとって生理的な行為で、出さないとお腹の中で詰まってしまう。詰まると便秘になってしんどい。 それでも、書きたくないことがある。便秘になっているのか。きっとその反対。空っぽなのである。 書くことがないから、書きたくない。書くことはしたいはずなのに。 この時僕は、「書かなければいけない気持ち」に陥っている。 別に悪いことじゃない。書きたい気持ちに素直になっている証拠だ。 でも、そうして動機を押さえているのに、
穂がなびていて。そこに、一匹のてんとう虫を見つけた。夜になっても光らないけど、ちゃんと見えていた。かき分けて、かき分けて探せたから。一本だけ、丈夫なもの。それを掴めればよかったから。 *** 夕陽が昇っていた。私はそう思ったの。顔を逆さまにしてたから。それでも、血は下に降りていくのね。 オレンジ色になったの。穂に絨毯が被さってね、耐え切れると思ったんだけど、やっぱりダメだったみたい。軽すぎたんだ。全部潰れちゃった。 でもね、見つけたの。一つだけ暗いとこ。周りは赤くって
螺旋のように出てきている。頭の中だけでなく、周りと巻き込んでいる。自分と相手の接面が現れて、あちこちで採光している。 うずくまることは、渦くまるということ。チラチラと、弾けるのか吸い込むのか。その間の状態が、丸く丸く小さい円たちで結び、全体として浮動している。