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2年ぶりに舞い降りた男



私はその日、客打ち(自分が働いているお店にお客として打ちに行くこと)をしていた。
他店舗から急遽、新店長として異動してきたばかりのDさんの様子を見たかったからである。

私はDさんの勤めていた店舗にヘルプとして勤務したことがあったので、Dさんとは面識があった。
このDさんは、真面目だけど出世欲のないTHE平社員タイプって感じの人で、責任が重くなる店長になんか絶対になりたくないと言っていた。

そんな人が知らない土地の新店長にいきなり抜擢されて、うまくやれるのか興味が湧いた。

Dさんは、すでにご遊戯をされているお客様やご来店されるお客様に名刺を渡してあいさつしていた。
お客様管理表なるものが存在していたので、パソコンで名前を検索すると、帽子を被ってるとかメガネをかけている等の身体的特徴、タバコの銘柄、よく頼む飲み物、注意事項等が出てくるのだが、Dさんは必死に照らし合わせながら話しのネタにしたり、お客様のお名前を覚えようと頑張っていた。

責任のあるポジションを与えられて、意外と意気に感じたのかもしれない。
正直感動した。

そうこうしていると、ご新規のお客様がいらっしゃったようだった。

私も異動で新しく来たばかりで、今日が初めてなんですよ~!これもご縁ということで、せっかくなので私からルール説明させて頂きますね!

なんていうDさんの元気な声が聞こえてきた。

ご新規さんへのルール説明が終わるとDさんは、

また来たいと思って頂きたい。
このお客様が今後の俺の店づくりの指針となるかもしれない。
お店にとっても初めてのお客様だが、俺にとっては移動してきて初めてのまっさらなお客様なんだ。ぜひ掴みたい。
この卓に入ってもらうからよろしく頼む。
と言った。

Dさんの想い…受け取りましたよ。
そのご新規のお客様に楽しいと思ってもらえるように私も頑張ります!

そしていよいよ同卓の時がやってきた。

皆様、当店お初めての【青田様】です。
宜しくお願い致します。

私は、Dさんに案内されたお客様をチラッと見ながら、宜しくお願いします~とあいさつしたが、なにか違和感を感じた。

もう一度、今度はしっかりと青田さんの顔を覗いてみた。

あ!!!この人、青柳じゃん!!!

2年前にトラブルを起こしまくって出禁にした青柳だった。
マナ悪に重度の三味線、刺さり切れて取っ組み合いの喧嘩を仕掛けて負けるなど、絵にかいたような面白い人だった。

というか、もう少し名前変えればいいのに。

私はすぐに代走を頼み、マジでやばい人だから帰ってもらった方がいいですよとDさんへ報告しに行った。

しかしDさんは断った。

2年も経てば改善されているかもしれないじゃないか!暖かい目で見てみよう!
なにかあればすぐに俺が対応するから!と。

初めはうまく猫を被っていたが、1か月ほど経った頃、だんだんボロが出てきて他のお客様からのクレームも増えてきた。

しかしDさんは、なにか決め手になるような出来事がないと出禁には踏み切らないと断言した。

ある日、青柳の対面にはメンバーが座っていた。
オーラス、青柳がトップ目45,000点ほどで、親のメンバーがラス目だった。

しかしこのメンバーの手がまたすごかった。
10巡目くらいに発をポンして、白と中を隠れ暗刻にした大三元をテンパイしていたのである。
待ちは5-8p。
どこから出ても逆転トップである。

すると、すぐさま下家から5pが放たれた…。
終わったかと思いきやなぜかスルー。

数巡後、上家が8pを切って立直…。
今度こそ終わったかと思ったが、なんとスルー。

ここまで言えばわかりますよね!

決め手になるような出来事か…。

起きぬなら、起こしてみせよう、ホトトギス


対面の青柳から放たれた立直者の現物8p…。
りょ~ん♡48,000です。

青柳はトップ目から一転、箱下へ。

さあこい青柳、猫被ってんじゃねえ!
怒れ!刺さり切れしろ!本性見せやがれ!

舐めてんのかぁ!?
山越かオラァ!!!

青柳は私の胸ぐらを掴んだところでお役御免となった。
サヨナラ青柳。もう二度と来るなよ。
青柳の息の根を止めた男。
その名も、1Pたそ。





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