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りかこ文法による他人事化その③

りかこは「可哀想な自分」を友達に発見してもらい、慰めてもらいたいがためにTwitterをやめることができない。毎日ネガティブを発進しては誰かがリプをくれたり、DMを送って心配してくれるから、それが社会とのつながりで、会社では弱いところを見せたら負けだから、必要不可欠であると思っている。世界に生きているけどほとんど世界関係ないから、と思って生きていても、インターネットは容赦無く遠いところの知らない世界も知らせてくる。紛争地帯の現状を見る。それに抗議する日本人のデモの様子を見る。そういったものがりかこにもたらすのは、「可哀想な自分を発進することは、贅沢」だということを突きつけられているようだった。本当に助けを必要としているからTwitterで「死にたい」とか「どうしようもなさ」を嘆いているんだけど、俯瞰してみると、私はすでに助けられている、とりかこは思う。友人がいて、家族がいて、働ける会社があって、何が不足しているかというと「恋人」なんだけど、肩書きがないだけですでに「恋人同等」の関係にある人がいる。彼は十分に助けてくれているのに、りかこは「肩書き」が欲しいと思っている。なぜなら、それを手にしたことによって、未来が安泰な気がするから。未来のために、料理教室に通って嫁入り前の準備もしてきた。でも、今に満足ができないで未来ばかり欲しがって、どうなるというのだろうか。今十分に自分のできる全てのことを惜しまずやっているのだろうか。紛争地帯から目を背け、幸せな未来にばかり夢想して、こんな自分が嫌になる、とりさこは思う。
自分一人で一体何ができるのか、ということを考える(または行動に移す)には、一人になってみるしかない。辛い時に辛いとTwitterに呟く代わりに、何が辛いのか、誰にも見せないノートに書き出して自分と対話してみることから始めてみようか。自分自身の中に染み込むんでいる大好きな人たちだったら、どう言葉をかけてくれるか、ノートに書き記してみる。
今の自分自身は過去の積み重ねによって出来ていて、未来の成分はひとつもない。その過去に、友人、家族、大好きな彼が居て、今の自分が居ることを否定してはいけない。
Twitterをやめて、電源を切ったスマートフォンを本棚に挟み、その夜りかこは少しだけ安心して眠ることができた。

photo:インベカヲリ★

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