見出し画像

局地的に発生した「碗琴」

佐賀県・有田町。言わずと知れた有田焼の産地だ。町は焼き物で溢れていて、有田駅を降り立つと、駅名や地図が書かれた陶板や手すりも有田焼、通りは焼き物屋さんが並び、町中にある陶山神社には、陶祖・李参平がお祀りされている。

豊臣秀吉による朝鮮出兵の引き上げの際連れて来られた沢山の陶工のうちのひとりだった李参平は、1616年泉山磁石鉱を発見、国産初めての「磁器」が誕生した。有田は日本の磁器発祥の地なのだ。

画像1

画像2

画像3

ちなみに、陶山神社は鳥居も有田焼、狛犬も有田焼、お社にも所々有田焼の装飾があり、泉山磁石場周辺には、足下一面に割れた有田焼のかけらを散りばめて埋め込んでいて、かわいくて仕方ない。

画像8

画像4

画像5

画像6

画像7

そんな有田の地でタイル会社を営んでいた故・和久陶平さんが1940年代、14個の有田焼を並べて演奏したのが碗琴の始まりだ。
有田の職人さんは「めおとし」といって、良く焼きしまっているかを確かめるために、器を指で弾いてその音を聞いて選別を行うという。
有田焼は陶石を砕いて成形し、高温で焼いている。素地が白くて透光性があり、強度が高いという特徴があり、叩くと金属のような澄んだ音がある。
初めて碗琴の音色を、ここ有田で聞いた時、オルゴールのような音色だと思った。陶土でできた器を叩いてもこのような音はしない。石ものならではの音なのだ。
特に有田焼は磁器の中でも、特に高温で焼きしめられているので、より澄んだ音がする。
和久さんはこの町で生まれ育ち、器の音を日々耳にしていたことから、碗琴を考案されたのだろうか。ちなみに、碗琴という名称は当時はなく、近年になって名付けられたそうだ。

(2012年執筆、2020年加筆)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?