子どもたちのこころの声

「このまえね、しんかんせんのったの!」「すごいね!ままと乗ったの?」「うん!」

たまたま託児のサポートをする機会を得て、子どもたちと遊んでいたときのこと。他愛もない会話をしながら、私はこっそり焦っていた。組み立てて遊ぶ、電車のオモチャ。その線路がどうしても上手く繋がらない。こっそり焦る私をよそに、子どもたちは途切れた線路で楽しそうに遊んでいる。

この日、預けられた子どもは合計6人。お母さんが子育てイベントに参加する間、ベビーシッターが子どもの面倒を見る仕組みだ。下は11ヶ月から、上は2歳まで。普段子どもに接する機会がない私は、彼らが思いの外しっかりしていることに驚いた。

一際大人びていたのが、2歳の斗真くん(仮名)。弟がいるから、自分のことは「にーにー」と呼んで欲しいと言う。他の子どもが泣いてるのを見て、誰にともなく「僕はお兄ちゃんだから泣かないよ」と宣言した。別の子どもが遊ぶ電車が線路の反対からやってきたときも、自然にどうぞと道を譲る気の使いよう。なんと分別の良い子がいたものかと感激した。

しかし帰り際、ベビーシッター達の反省会で、思わぬ意見を耳にする。「あの子(斗真くん)、少し危ういね」。周りのため、過度に自分を抑えて我慢する子は、共同生活が始まると周りの幼さに我慢できなくなり爆発してしまう可能性があるというのだ。同じ様子を見ていたはずだが、彼女たちの洞察力の鋭さに驚かされた。

一般社団法人日本ユース子育てシッター協議会の代表理事の代表、小柳明子さんに話を聞いた。子どもと向き合うとき、彼らの真の欲求に気付き、それに応えてあげることを大切にしているという。自分たちは母親にはなれないが、預かっている間、子どもたちの欲求をできる限り満たしてあげたいと語ってくれた。

近頃、少子高齢化を背景に、人材としての女性に光が当てられている。雑誌などでも「働く女性」や「ワイフワークバランス」といった言葉を頻繁に耳にするようになった。支えているのは、子どもたちのこころの声に耳を傾けようとする、優しい目たち。その事実を忘れてはならないと思った。


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