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「感謝」を漢字の成り立ちから考えてみた

「感謝」が大切だとよく言われます。曰く「ありがとう」をしっかりと伝えることが日々の暮らしで重要なんだと。

皆さんは、「感謝」を大切な人や身の回りの人に伝えられていますか。

せっかくなので、白川静先生の漢字学を踏まえて、僕の「感謝」という言葉に対する見解をご紹介したいと思います。

「謝」という字

そもそも「謝」という字は、「言」+「射」で成り立っています。

「言」は分かるとして、どうして「射」があるんだと疑問に思ったことはありませんか。

「そりゃあアレだろ。弓を射るように相手の心に言葉を届けるんだろ?」

素晴らしい!いいセンをついています。

ここで補助線を一つ入れるとすると、「弓を射る」ということには、元々どんな意味・意義があったかということです。

古代中国では、狩りに使うだけでなく、重要な儀礼の際に「弓を射る」ことが祭礼として実施されていたのです。

では、何のために矢を射るのかというと、それは「お祓い」的なもののためなんです。

急に「お祓い」だなんて言われると身構える人もいらっしゃると思いますが、ここでは「邪(よこしま)なものを取り除く」とか「悪いことが起きないようにする」や、いっそ「素直になる」くらいの軽い意味に取っておいてください。

だから「謝」の字は、ありがとうの「感謝」にも使えるし、ごめんなさいの「謝罪・面会謝絶」にも使えるんです。

どちらも、「自分の気持ちを言葉にして素直に(邪心なく)伝えたい」ということが一緒なんですね。

僕は、どうしてポジティブなありがとうと、ネガティブなごめんなさいに共通の漢字が使われているのかが不思議でしたが、この意味を理解して疑問は氷解しました。

さらに「謝」の字には、矢が流れていく様から、さようならの意味を含んだ「謝恩」から、はたまた「代謝(移り変わること)」という意味まで備えていくんです。

意外と侮れない幅広さを持っている漢字なんですよ、この「謝」ってやつは。

「感」という字

ところで、今回は「感謝」の説明でしたね。「感」の字が寂しそうにしているので、こちらの解説もしたいと思います。

「感」という字は、「口+戈(武の一部、ほこ)+心」で出来ています。

この「口」は神さまへの祝詞を入れる箱だと解するのが、白川静先生の考えです。

神さまへの祝詞を入れた箱を奪われないようにしっかりと守っておくと、夜中に神さまが、こっそりとやってきて、祝詞に示された気持ちに応えてくれるんだそうです。

「神さまの心が動く」ことが、「感」の原義なんです。

そこから、「すべて(自分も含めて)の心が動く」ことまでが、「感」の字に含まれていって、「オレ、めっちゃ感動したよ」という表現になっていくわけです。

「感謝」という漢字が示すもの

纏めると、「感謝」とは、すなわち、

「すべて(自分と相手、はたまた周囲も含めて)の心に、素直に自分の気持ちを届ける」

という意味が出てくるのです。

たとえば、幼い子どもが屈託のない笑顔で「ありがとう」と言っている様子を公園とかで見かけると、周囲にも明るさが広がっていきますよね。

そんな気持ちで表情で、はたして僕は「ありがとう」を伝えられているのか。。。

これまでの行為は一旦棚にしまっておいて、今後、まずは、きちんと感謝を「言葉」にして、伝えていくことから始めたいと思います。

この文章を最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!!!


さて、白川静先生の漢字学にご興味がある方は、以下の本がオススメです。

『漢字百話』白川静

また、ちょっと高いですが白川先生による漢和辞典もあります。

『常用字解』白川静

もし宜しければ、手に取ってみてください。

なお、文中において誤りや理解違い等あれば、それは全て筆者である私の責めに帰するものです。

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