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犬をひろった…ときの話

ゆらゆら、ふらふら動く何かが目の端に入ってきました。

実家からの帰り道。
車を運転し片側2車線の県道に入ろうと左右確認したとき、
もふもふした何かが動いているではないか。

歩道をこっちに向かって走ってくる、アレは犬だ

周りに人影ないし、交通量の多い道路に出たら危ない。
かなりふらついている走り方で、足跡がアスファルトに
残るほど汗なのか液体がたれている。

どっ、どうしよう。
一瞬にして、動物を保護した人のテレビ番組を思い出す。

動物病院に連れて行き高額な治療費を負担し、
一緒に暮らしはじめるという感動の内容だ。

いやいや、お金ないし、
これから車で2時間かけて家に帰るわけだし、
実際、世話は誰がする?私?仕事中どうする?

犬は大好きだし、
幼い頃、飼っていたし、
散歩している犬には声をかけてるし、
できれば、わちゃわちゃ触りたいほど大好きだ。

でも、私のペットロスは酷い。
思い出してみよう。
10年前にハムスターが死んだとき。
一週間はご飯が喉を通らなかった。

歳をとってからのペットロスは
想像以上にツラかった。
あのツラさを味わうのは
もういやだ。

と、あれこれ思ったのは10秒くらい。

すぐに車をバックして空き地に止め、
犬の前に行くと、犬は走るのをやめて私を見る。

かっ、かわいい!

ヨークシャーテリアだね。
毛並みがふさふさ……… してない!
かなりベタベタしてる。

いったい何キロ走ってきたの?
こんなに汗だくでふらつくほどに。

まずは、確保しなくちゃね。
抱っこさせてくれるかな?
あら、抵抗する気なしで、人慣れしてるね。

スッと持ち上げようとしたら
ん? 予想よりずっしり。
見ればお腹が膨らんでる。
もしかして、妊娠中?

ちらっとお腹の下を見ると
あら、オスだわ。

ということは、長く走っている間に
何かが起こり、お腹に疾患が起きたのか?
かなり腫れている。

とりあえず、そぉ〜っと車に乗せる。

さて、どうする。
彼の体は大丈夫なのか?

時間は、夕方、18時。
ラッキーなことに19時まで診療してくれる病院が
近くにあった。

一万円札がパタパタ飛んでいくかもしれないけど、
行くしかないでしょ。

ブランケットにくるんで病院の受付に行くと
小型犬が診察を受けているところ。

遅い時間だからなのか、先生ひとりで
他のスタッフはいない。

レストランの予約のように、
名前を書いて呼ばれるのを待つ。

彼は病院のフロアをゆっくり歩いている。
大丈夫?と声をかけながら彼を撮影。

保護したことを一刻も早く知らせるため
SNSに写真と保護場所を載せる。

我ながら早かった。
すぐに飼い主が見つかるといいな…。

約5分後、彼を先生に診てもらう。

先生は、彼に顔をなめられまくり。
動物が好きな先生で良かった。

聴診器を胸に当てて、
心臓は大丈夫ですよ。

それでね、この子が変な走り方をしていたのは…と、
先生が発した言葉に、私は唖然としてしまいました。

このお腹は、脂肪です。
脚が細いでしょ。筋肉が無いんです。
太って運動しなくて脚に筋肉がつかなくて、
それで変な走り方に見えたんでしょう。

この子が悪いわけではないんですよ。
飼い主さんが、そうさせちゃったんです。

逃げてきたのかな。と話しかけながら
ずっと顔を舐められまくりの先生。

ヨークシャーテリアで毛が長いから
パッとみた感じではお腹の膨らみはわからない。
だから脚が細いのは、何日も食べていなくて
走り続けて痩せたのかと思っていた私。
肥満だったんですね!

ということは、少し走っただけで脂汗をかいて
意外とすぐ近くに家があったかもしれない。

ポカンとしている私に、先生は2つアドバイスをくれました。

1、警察を通すこと
2、SNSの投稿はやめること

良かれと思ってSNSに投稿している優しい人がいるけれど、
結構トラブルが起きるんですよ。

飼い主が、ちょっとアレな人の場合(表現をにごします)
「怪我をさせた」と言って高額な賠償金を請求されたり
「散歩させていたら誘拐された」と脅されたり
まさかと思うことがこの世の中にはあるそうです。

だから、警察に届けを出していた方が安全だと教えてもらいました。

学ぶこと多いわ。

というわけで、19時過ぎに交番ではなく大きな警察署に行くと
4人もの警察官が対応してくれました。

犬は拾得物になるそうで、遅い時間だったので窓口は閉まっていて
普段の業務以外の手続きを2人がしてくれて、もう一人は、
ケージを持ってきて水とドッグフードを用意。
もう一人のおじさん警察官は、ずっと犬を見ていました。
きっと好きなんでしょうが、私がいる間はニコリともしませんでした。

手続きの中で、もし飼い主が現れなかったとき、
飼う意思があるか聞かれましたが、NOと返答。

抱き抱えた感触は何日も忘れられなく、
どうなったか心配だけど…。

今は、ペットの首にマイクロチップが入っているそうですね。
飼い主さんが見つかっているはずと願い、逆に
肥満にさせちゃう飼い主さんの元に帰っていいのか?
なんて、自分が飼えるはずもないのに、悶々としています。

彼が肥満だったこと。
むやみにSNSに投稿しないこと。
トラブルに巻き込まれないよう、警察を通すこと。

たった3時間の間に起きた出来事で
学ぶことが多かったです。














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