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エジンバラの小さなカフェから #7
いつもの水曜日のランチタイムが過ぎた頃、
お店のドアベルがカランと鳴った。
ヒョロっと背の高い青年がもの珍しそうに入ってきた。
ぎこちなくもスタスタとカウンターの方に歩いてきて
カプチーノを注文してくれた。
「ずっとこの街に住んでいたけれど、ここにカフェがあったなんてわからなかったよ」
黒縁のメガネの向こうに見える目元はとても彫りが深く
どこか奥深い雰囲気とは裏腹に
とても気さくで楽しそうにこちらに話しかけて来てくれる。
とても強いスパニッシュアクセントの軽快な口調に思わず
「出身はスペインですか?」
と聞いてしまったほど。
「そうそう。やっぱりこのアクセント、わかりやすいよね?
君はどこからきたの?」
カウンター越しに生まれる、この何気ないやりとりが好きだな・・と感じながら
「I'm from Japan. 一昨年からこの街に住み始めて、本当に夢のようだよ。」
と答える。
大学生の時に行ったバルセロナで、ガウディの大作を見たときの衝撃を今も覚えていることや、スペインの友人との待ち合わせが30分遅れでも平気だったこと、思わず夢中になって目の前のスペインの友に話し始めたら楽しくなっていた。
そんな話をしているうちに、カプチーノを受け取った彼は
その横にあったハイチェアをグイっと持ってきて
わたしの目の前に腰掛けながら話し続けた。
いつのまにかレジカウンターが
賑やかなコーヒーテーブルになっていた。
スペインのこと、今フルタイムのお仕事をお休みして写真を学んでいること
この街にたどり着いた経緯なんかを話してくれた。
I’m Luis.
そう自己紹介する彼の声にかぶせたように
カランとまたドアベルがなる。
青年の頭の向こうに目をやると
この前のタクシードライバーのおっちゃんが入ってきた。
またいつものスープスペシャルかな?
と思うまもなくハッと気がついたわたし。
このおじさん、そういえばスペイン語を勉強してるんだった☆
「とってもいいタイミング。彼、スペインから4年前に来たってさっき話していたんですよ。スペイン語を学ぶには最高の相手ですよね?」
「ああ、そうなのかい」
とさっそく握手を交わすふたり。
おじちゃんの腕からは、
いつものアツい”Live Your Life”のタトゥーがちらっと見える。
自己紹介するなり、すぐにおっちゃんは、いつもの特等席に。
わたしが気づいたときには、
ルイもコーヒーカップを片手に一緒のテーブル席に移っていった。
この小さなカフェで、こんな偶然が生まれるなんて。
窓辺のテーブルをはさみながら生まれる他愛もない会話。
ふだん出会わないような2人が、あたたかな笑顔で会話をつむぐ光景をみながら、
こうして人と人が温かく繋がれた瞬間に立ち会えたことがとても嬉しく、ほっこりする瞬間だった。
もともとは備忘録のような位置付けでブログを始めましたが、すっかり自分の心の拠り所になっていました。サポートいただけるなんて夢のまた夢ですが、もしそれが叶ったとしたら、めちゃくちゃうれしいです☆