手負いのけもの

このけものを傷つけたのはあなた。目の前で、息も絶え絶えに苦しんでいる。血を流し続けている。

このけものは下手に扱えば、あなたもただじゃ済まない。
牙で噛みつかれたり、爪で引っ掻かれたりするかもしれない。だってけものはあなたに傷つけられたんだから。


あなたはこのけものを救うか、とどめをさすしかない。
それが嫌なら、目の前のけものを失いたくないなら、何をされようが手当てをするしかないんだ。

傷は化膿して死ぬかもしれないし、後遺症が残るかもしれない。完治するなんて保証はない。
運良く完治したとして、けものがあなたを好きになるかの保証なんてもっとない。

復讐されるかもしれない。あなたの元を去るかもしれない。

それでも、償うとは、救うとはそういうことだ。

けものが生きている限り。

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