シェア
1.5(イッテンゴ)
2019年8月3日 23:31
隅の席で読書に没頭する眼鏡の男のカップにお代わりを注ぐと、カウンターに戻って伝票の正の字に一画を足し、女給は客を振り返った。 彼からは注文を取らないで良い、とは勤めて二日目に聞いたマスターの言である。 いつも本を読みながら来店する彼は、店の者に一瞥もくれずに席に着く。 彼が来店したら黙ってブレンドを出す。カップが空になったらお代わりを注ぎに行く。そういう約束だそうだ。「良いんですかね