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読書ノート 「沖縄ノート」 大江健三郎

 広島・長崎と並んで日本の大きな禍根となる沖縄。禍根というのは沖縄が悪とか負債とか、重荷とか負い目とかいざこざというのではなく、歴史という意味。
 
 最終章でハンナ・アーレントの『イスラエルのアイヒマン』を参照しているのを今回始めて発見した。アイヒマンは逃亡をしなかった理由に「ドイツの青年の心から罪責の重荷を取り除くのに応分の義務を果たしたかった」と「高揚感」を持って告白している。これと同様に、「おりがきた」として沖縄空港に降り立つ、旧守備隊長に同質のやましさを指摘し、「日本青年」はその上、実はその心に罪責の重荷を背負ってすらいないことを明らかにする。

 「恐ろしい未決の課題」としての沖縄を、「問題は終わった」とするなら、それは「太平洋の向こう側で「『日本問題は終わった』、と、さばさばした顔の連中がうそぶく声もまた、はっきり聞こえてくる筈である」とする。

 「本土」ということば、「日本」という国。形相と本質の合致するはずのない魑魅魍魎のなにかで、コンクリートを引くように歴史が作られる。

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