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連載小説【夢幻世界へ】 2−4 意味するものと意味されるもの

【2−4】


 「幻影の人」である昔の彼女が、どうやら行く手を塞いでいるのは間違いがなさそうである。

 たまらず、歩道を駆け出し、公道に出たところでタクシーを拾う。

「京都駅まで」
「ここは東京ですよ」
「構いません、ここは京都でも東京でもないのですから」
「kyotoでもtokyoでもない、としたらここはどこなんですかね」
「それは言わないお約束。とりあえず車を出して。厄介な奴に付きまとわれているんだ」
「わかりました」

 時空連続体構築濃度計測器によると、この一帯の濃度はなんとか一定レベルを保つことができている。暗闇のなか、自らトンネルを掘っている気分だ。いく先々の世界構築をしつつ、邪魔しようとする輩をすり抜けながら、彼女に辿り着くことの、なんと困難なことか。


 タクシーを降り、飛行場に入る。搭乗手続きをし、飛行機に乗り込む。

 手荷物を上部のトランクに入れ、シートに座り、目をつぶる。できれば次に目を開ければ北海道に着いていてほしい。そう念じながら膝の上の拳に力を入れていると、誰かがそっとその上に手を置く。


「怖いんじゃないですか。震えていますよ」

「力を入れているだけです」

「あら、そう。なんだかとっても苦しそうだったので」


 目を開けると、スーツ姿の女性が座っていた。

 女性は小さな声で囁く。

「意味するものと意味されもの、それを繋ぐ意思はなに?」

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