日佐郎とイザベラ

サマンサタバサにEXILEにミランダカー。どの要素も見事に自分には取っ掛かりにならない、我ながらあまりにもお客さんじゃないっていうくらいの認識だったサマンサタバサのCM。でも今は違う。おれは知ってる。主人公の男が失恋のショックで仕事に大穴開けて、最後のチャンスで「一年間恋愛禁止」の約束とともにニューヨークに派遣されたデザイナー、日佐郎であることを。そして女性がニューヨークで鳴かず飛ばずな女優、イザベラであることを。なぜなら読んだからだ、「※CMの続きを小説で サマンサタバサHPで連載中!」ってCMの最後に端っこに表示されてるあれ(全4話)を。

小説書いてるのは女性視点が川上未映子、男性視点が阿部和重っていう期待したよりもちゃんとしちゃってそうな感じだが、章を区切るマークが「♡」だったり、全国のサマンサタバサの店員が共感したフレーズとセットでバッグを紹介してたりってのは自分の中のサマンサ感、タバサ感を裏切らない。そしてなにより、読んでからあのCMを改めて見ると面白い。特にミランダカー。

CMでのミランダカーを、文中での対応する場面のイザベラの心理描写を思い出しながら見るととてもいい。なんだろうか、このミランダカーのイザベラ感のなさ。例えば待ち合わせ篇の冒頭。文中(第3話「decision」)では

「けれど、初めて夜を過ごしてから初めて顔を合わせるわたしは朝から妙にそわそわした気持ちで落ち着かなかった。」

からの待ち合わせだが、ミランダカーは自信満々の表情でショウウィンドウに映った自分をチェックしてる。片膝だけクイッと軽く曲げて立ってる。モデルとしては至極真っ当。不安のあまり30分も早く着いちゃって手持ち無沙汰のあまりの行動のはずなんだが、「そんなん知るか」と言わんばかりだ。っていうかほんとに知らないんだと思う。下手すりゃ「イザベラ」って名前も。イザベラに関しちゃたぶんおれのが詳しい。

あと「日佐郎」な。ちなみにイザベラ視点では「ヒサロー」。いままで何回もぼおっと見てたCMを「こいつ日佐郎っていうんだ…」って思いながら見るだけでもなぜか少し面白い。「日佐郎」って。なんか由来あんのかな。個人的なEXILE観からすると「日サロ」を連想しちゃうけど、まさか違うだろうし。謎だ。まあとにかく、これからは「日佐郎とイザベラ」として前より興味を持って見られる。とか言い出した矢先に新しいシリーズになっちゃったりしそうな気もするけど、それならそれで別にいいや。

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