嫌な日の始まり

起き抜けにノンストップを見てた。宇多田ヒカルの結婚式の話。思いっきり失恋の歌である代表曲をBGMに、厳重な警備だの料理だの引き出物だのが紹介されてくのがなんとも因果な感じでいい。さらに画面の下に次々表示される「#ノンストップ」をつけたツイート(その名も「せきららボイス」)。「おめでとう」だの「お幸せに」だの、気持ちのこもってなさそうな、こもってるんだとしてもなぜここにそれをツイートするのかわかんないような言葉が入れ替わり立ち替わり。このツイートもその中のひとつだった。


”宇多田さんの愛もノンストップだね。”


嫌な日だ。今日が嫌な日であることを直感的に確信させるに十分なフレーズである。なんたって宇多田さんの愛がノンストップなのだ。「ノンストップ!」という番組の名前を、新婚の宇多田ヒカルの前途洋々たる夫婦生活と引っ掛けたわけだ。この名文を思いついた瞬間、雷に撃たれたような衝撃が走ったろう。天啓だ。はやる気持ちを必死で抑え、タイピングをミスしないように震える手をなんとか制御して、ゆっくりと、慎重に、打ったんだろう、「宇多田さんの愛もノンストップだね。#ノンストップ」と……嫌な日だ。

テレビ見ながらハッシュタグとかニコニコ実況のコメント追って楽しむことはたまにやるけど、番組側がそれを画面に表示しますって話になると途端に面白くない。そりゃまんこだのキチガイだの表示されちゃ困るわけで。汚い言葉も幼稚な荒らしも人格を疑うような暴言もない代わりにその逆もない。「清濁」の範囲が狭いというか。野次の濁流が流しそうめんみたいになっちゃう。その結果流れてくるのは「このくらいのこと書いとけばテレビに表示されるかも」みたいな、とても温度の低い自己顕示欲の込められた「宇多田さんの愛もノンストップだね。」だ。

昼間、スーパーで毒餌を買っていた。そろそろそういう季節だ。毎回思うんだけど、四期ぶりの対策グッズのパッケージにリアルな六期ぶりのイラスト載っけるのってどういう神経なんだ。それを見たくない一心で金もねえのにこんなもん買うんだよ、こっちは。パッケージから微妙に目をそらしつつ会計を済ませて外に出た時、唐突に思い出した。


”宇多田さんの愛もノンストップだね。”


…嫌な日だ。

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