鳩は前向き

「男がいる」と「男しかいない」は違う。後者は完全に女の子がいない。悲しい。「NHKを見る」と「NHKしか見ない」も違う。後者はわりと厳格な親がいる感じだろうか。「厳格」を気取りたい、かもしれない。とにかく、「しか」の背負う情報ってのがある。

CD買ったりダウンロードしたりしなくても、テレビ見てればAKBの新曲は頻繁に耳にする。今だったらバイトルのCMとかで。「前しか向かねえ」だ。で、これ聞くたびに思う。「しか」ってなんだろう。

「前”しか”向かねえ」っていうのは、「後ろを向かねえ」ってことだろう。「柿の種”しか”食わねえ」っていうのは、「ピーナッツ食わねえ」ってことだ。「前しか向かねえ」の「しか」には、「後ろ」への強い意識を感じる。じゃあ別に後ろも向けばいいんじゃないかっていう。そんなに気になるんなら。ちょいちょい後方確認すりゃあいいじゃないか。

なんだか「前向き」を標榜する人は本質的には後ろに重心がかかってんじゃないかって気がする。この場合、わざわざ「標榜」してるとこがポイントだ。まあ、「前しか向かねえ」に関しては応援ソング的な役割上、はっきり言わないことにはしょうがないってのもあるんだろう。個人的に応援ソングなるものを欲してるかどうかはまた別として。ただとにかく、そんなに必死に向かないといけないもんなのか、「前」は。

ホラー映画見た後、ひとりで風呂でシャンプーしてるとすっごい背後が気になったりするだろう。で、怖いから急いで洗って流す。シャンプー、雑になってないかと。一旦後ろ確認して安心すりゃいい。「前向きに!」「ポジティブに!」「プラス思考!」みたいなことを自分から口にするのってそんなに言うほどいいことなのか。他人が見て「前向きだねえ、あの人」ならいいけどさ。

もうあれだな、鳩だったらよかったんだな。ほぼ360度見えるらしいし。振り返るもクソもない。そもそも前しか見えねえもんだから「前しか向かねえ」とか言い出すんだ。ややこしい。

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