逆さバカ五百代

人が4人、橋から川に向かって逆さ吊りにされていた。逆さ吊りで獅子の面をかぶってなにやら体を激しく動かしている。なにやってんだと思ったら、長野の千曲市の奇祭のニュースだった。こうやって五穀豊穣を願うらしい。そうか。なるほど。で、なにやってんだ。

祭りなんてもんはよそから見れば総じて「なにやってんだ」としか言いようのないものだし、そう思って理由を聞けば二言目には「五穀豊穣」と言い張るもんだ。便利だな、「五穀豊穣」は。万一、手淫の現場を押さえられるような目に遭ったあかつきには使ってみようか。

「なにやってんの…?」
「…ご、五穀豊穣をね…」

敗訴濃厚だからやめとこう。そこまで便利ではないな。そこまで便利じゃない「五穀豊穣」はとりあえず置いといて、この逆さ吊りは500年以上の伝統があるらしいが、最初は単に村のバカが遊びでやったとかじゃないかと思う。というより、「500年前からみんなで五穀豊穣を願ってやってます」より「バカが逆さ吊りになって遊んでたら500年後に重要無形民俗文化財になっちゃった」のほうが好きだってだけ。いいじゃないか、「500年前のバカ」って。ちなみにハチ公も「焼き鳥もらえるから毎日来てたら銅像になった」説支持派だ。

さて、今度は現代の最新バカ事情を見ておこう。奈良の天理市では、3月からビニールハウスが壊される事件が数件発生してたらしい。その犯人と思わしき男が最近捕まったわけだが、動機は農家への嫌がらせか、単にむしゃくしゃして憂さ晴らしか。どっちも違った。

「ビニールで体を巻くことが好き。ビニールフェチです。」

これが本人の供述だった。色んな人がいるもんだ。家でサランラップ巻くのでは飽きたらなくなったのか。ビニールフェチの気持ちはよくわかんないが、ナメちゃいけない。500年後、みんなでビニールを体に巻きつけて五穀豊穣を願う奇祭「ビニール巻き祭り」が天理で行われている可能性だってある。そんなことを思いながら、逆さ吊りになった500年前のバカの末裔たちを見ていた。なにやってんだ、この人達。

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