褒め自殺

「日本人の方ってすごいですね。」

褒められたさも臨界点に達したのか、この秋からはいよいよ「外国人に褒めてもらう」をテーマに掲げたようなゴールデン番組がいくつか出てきた。先に断っとくと「YOUは何しに日本へ?」はそこには該当しないと思ってる。あれは登場するYOUたちの面白さが主役なんであって、「外国人=日本を褒める装置」じゃないし。

さて、この秋始まったのはテレ朝の「世界が驚いたニッポン!スゴ〜イデスネ!!視察団」とTBSの「所さんのニッポンの出番」あたりか。前者は未見なのでここではスルー。後者は番組表に「今夜も外国人が日本人をホメまくる」っていうよだれまみれの文句が書いてあったから思わず録画して見た。褒めてたよ、時間に正確だとかなんとか。結局この辺に落ち着くのが悲しいとこなんだよな。「トイレがキレイ!」とかさ。

「COOL JAPAN〜発掘!カッコイイニッポン〜」って番組がNHKのBSで始まったのがたぶん7、8年前だったと思う。「外国から見た日本」って視点は、この頃はそれなりに新鮮で面白いものではあった。ただ、ここまで手垢でべっとべとになった今となっては「日本すごい」の中にあるいっちょ噛み精神がだいぶ際立ってきちゃってるのでは。

電車が定刻通り来るのは鉄道会社の人が努力したからだし、トイレがきれいなのはTOTOかなんかの人が工夫したからだ。おれらあんま関係ない。その人達がすごい。ただここで「すごい」の指す対象を勝手に自分も該当する範囲まで広げると、他人の手柄に手軽に乗っかれる。「同じ○○県民として」とか「同じ女性として」とか。「日本がすごい」はその中でも結構でかい。拡張してけば「イルカは海中で超音波を使って会話してるんだって」「へえ、同じ哺乳類として誇らしいね」とだって言える。

さて、冒頭の発言だが、これは意外と外国人の発言ではない。「ひるおび!」の新聞記事紹介コーナー、アメリカの大学で肺がんの治療薬の研究をしてる日本人の教授の話題で、例によって「日本人すごい」に着地させようという流れの中でコメンテーターの三田寛子が放ったものだ。日本人を褒めようとしたら自分が外国人みたいになっちゃったっていう。なんだかこれはこれで斬新だったけど、なんかだいじょぶかって思った。同じ日本人として。

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