ヤギはいる

「スタッフがおいしくいただきました」「専門家の指導の元で行っています」「CM上の演出です」等々のお断りテロップがツッコミの対象になってから、結構時間が経ったんじゃないか。もはやいちいち「それいらないだろ!」「わかってるよ!」とかツッコむのもバカバカしいというか、出すほうも見るほうも「まあそういうもの」って感じだ。

「ハイジの村」っていう施設で飼われてるセントバーナードがお客さんに噛み付いちゃったっていうニュースを見てた。この犬はハイジのおじいさんが飼ってるヨーゼフをいわば模したマスコット的存在だったわけだ。それが噛み付いちゃった。ミッキーが客ぶん殴ったみたいな話だ。それはそれですげえ見たいけど、犬はそうもいかない。しかも先月に続いて二度目ってことで、しばらくはお客さんの前に登場するわけにはいかないだろう。

ただ、ハイジの村には着ぐるみのハイジとか100円入れてボタン押すと立ち上がるクララとかがいるわけではないらしい。「この犬のほかに施設内にはアニメのキャラは存在しない」っていうナレーションがハイジの村におけるセントバーナードの存在の大きさを強調する。と、同時にそのテロップは表示された。

”ヤギはいます”


そうか、ヤギはいるのか。そう、ヤギはいるのである。「ヤギはいます」が表すのは「ヤギはいる」ということだけだ。「劇中に出てくるものはなにもないみたいになっちゃったけど、ヤギはいますよ」っていうおなじみの説明過多なのかもしれないし、「ヤギはキャラとしてカウントされないとでも言うのか」と一部の熱狂的ユキちゃんファンは激昂するかもしれない。でももう、そんなことはすべてどうでもいい。ヤギはいるんだ。なんだ、この謎のパワーは。


「そして誰もいなくなった」※ヤギはいます


名作タイトルを支配できるパワーだ。ただそのパワーを説明する言葉が見つからない。「STAP細胞はあります」なら色々言えそうだが、「ヤギはいます」は「ヤギはいます」だ。問答無用だ。ただ口を半開きにして「ああ、ヤギはいるのか」と思うしかない。エスカレート期とツッコまれ期を経て、お断りテロップはなにやらすごい方向に成熟してるのかもしれない。「ヤギはいます」の文字列に再び遭遇することはこの先の人生であるんだろうか。なくていい。どのみちヤギはいる

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