パイオニアで単色が強い理由

パイオニア環境で単色アグロの隆盛が止まらない。

これまでの大会結果を見ればわかるように、赤/黒/緑の3種の単色アグロが上位デッキのほとんどを占めている。
それも多色デッキが弱いという消極的な理由ではなく、2つの共通項を持った単色デッキが明確に強いというだけである。

今回は単色デッキ躍進の理由を掘り下げつつ、本当に使うべき単色アグロを探っていく。

1.マナベース

多色と単色の最も異なる部分といえば、無論マナベースである。既に繰り返し語られていることであるが、パイオニア環境はフェッチランドの不在により多色デッキのマナベースが脆弱である。

とりわけ有効色の組み合わせは最悪で、ファストランドもダメージランドも無く、構築級の多色土地はショック/M10/占術土地に限られる。
その中で安定したマナベースを構築するとなると、占術土地を使わない選択肢はほとんど有り得ない。
つまり友好2色のデッキでは、序盤のテンポが重要なデッキは構築不可能なのだ。
大会結果がそれを裏付けるように、友好色のデッキといえば青白コントロールしか見かけない。

では対抗色はどうか。
友好色が持たない序盤で強力な土地を擁し、さらにはミシュラランドで後半もスキがない。確かに対抗色のマナベースに問題はない。
しかし単色デッキに比べて勝ちきれない。
その理由は「多色では変わり谷を採用できないから」、この一点に尽きる。

(ここから2章までは変わり谷の強さについて述べているので、知ってるという方は読み飛ばしていただいて問題ありません。)

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2/2のクリーチャーになれるだけの土地の何がそこまで強いのか。それを理解するためには、多面的にこのカードを評価する必要がある。

まず大前提として、変わり谷は土地である。
MTGにおいて土地カードは1ターンに1枚、無償で盤面に追加することのできる唯一のカードタイプである。
当然、変わり谷も土地の一種であるため、実質的にはクリーチャーでありながら無償で設置することができる。
加えて、セットランドには優先権の移動が生じない。つまり、打ち消されることなく盤面に干渉できる。
これは対コントロール戦において、大きなアドバンテージであることは説明するまでもないだろう。
しかも2色のミシュラランドと違い、アンタップインで戦場に出るため、土地としての機能も十分に果たす。
クリーチャーとしても、出してすぐにブロッカーとして運用できる。
色マナが捻出できないという一点を除けば、変わり谷はあらゆる観点からノーリスクなカードと言える。

変わり谷の強みはまだまだある。
その1つが除去体制。繰り返しになるが、変わり谷は土地である。アーティファクトでもエンチャントでもない。こちらから能力を起動しない限り変わり谷は土地で有り続けるので、ソーサリータイミングの除去は無意味になる。当然ラスも喰らわない。盤面がサラになっても変わり谷だけは残り続ける。
この特性は機体にも同じことが言えるが、機体は所謂ディッチャで割られてしまう。ディッチャ系のカードがサイドに潜むのはMTGの常なので、サイド後は除去体制の信頼性を大きく損なう。
その点土地を割れるのはランデスだけであり、ターゲットが狭く、効力も薄くなりがちなこのカードはサイドに取られることは稀だ。
つまり、基本的に谷をめぐる攻防のイニシアチブは、谷のコントローラー側が握っている。

もう1つ、変わり谷が最高な理由が事故リスクの軽減だ。
全てのデッキには土地が入るものだが、言い換えればどんなデッキもマナフラッドのリスクを孕んでいるということである。変わり谷の有無は、フラッドのダメージの大きさを変化させる。変わり谷が入っている枚数は、そのままデッキ内の不要牌の少なさに直結する。これは除去を打ち合うゲーム展開や、ミラーマッチにおいても重要なファクターになる。

まとめると、単色デッキにおける変わり谷は、入れるだけでノーリスクでデッキの安定性を1段階引き上げるスーパーカードなのだ。

この素晴らしい土地を差し置いて、多色化するメリットがないのが現環境である。オーコは既に禁止されており、そこまでのカードパワーを持つ多色のカードは存在しない。

2.出来事呪文の有無

エルドレイン後のスタンダードとパイオニア環境を通じてわかったことがある、「出来事呪文は壊れている」。
パイオニア環境で有力な出来事呪文は、砕骨の巨人/恋煩いの野獣/残忍な騎士/厚かましい借り手の4種類。
厚かましい借り手以外の3種類は、Tire1の単色デッキで確定で4枚積まれている。借り手に関しても青単の周りのカードが追いついていないだけで、自身のカードパワーに疑問を持つものはいないだろう。

出来事呪文の強さの秘訣は、単純なカードパワーも然ることながら、その柔軟性にある。
これらのカードは引き込むだけで、マナカーブを3スロットも埋める。砕骨の巨人を例に取ると、2-3マナのアクションを1枚で完結させ、手札に残った際にも2+3の5マナ域としても機能する。
初手にこのカードが一枚あるだけで、他のカードは1マナ域と4マナ域があれば毎ターンのアクションが確定する。

マナ域が可変のX呪文は、これまでも環境に大きなインパクトを与えてきたが、出来事の1枚で2アクションの強さには遠く及ばない。1枚で2枚分の働きをするのだから、実質強欲な壷であり、マリガンも帳消しにできる。

この出来事呪文の強さも、環境の単色化を推し進める要因になっている。1ターンに2モードで唱える場合は、最低でも特定色を2シンボル揃える必要がある。そのため、出来事の強みを最大限発揮するためには、メインカラーであることが望ましい。

出来事呪文+変わり谷の組み合わせが単色デッキの安定性を大きく引き上げた結果こそが、単色躍進の所以ではないだろうか。

3.ベストな色は?

前述の要件から、赤/黒/緑の単色デッキを評価していく。
まずは緑単に触れていこう。

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サンプルリスト

緑単には出来事枠に恋煩いの野獣があるが、ニクソスを採用する関係上、変わり谷が不採用となっている。
それによって、デッキ全体の継戦能力はかなり低くまとまっており、全体除去を全く受けることができない構成だ。
それはガルタ4枚からも分かるように、根本の構築思想から後述の2デッキとは異なる。
このデッキは所謂メタデッキであり、対クリーチャーデッキ戦に特化した構築であるため、不動のTire1にはなりえない。緑単は選択肢から外す。

次に赤単。少し前の環境ではバーンに寄せた構築も流行の兆しを見せていたが、現在赤単と言えばミッドレンジ型が主流になった。

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サンプルリスト

赤単は3,4マナ域の取り方やサイドによって差異が生まれるが、このリストは環境の中心を行っているように感じる。出来事枠には砕骨の巨人。個人的には巨人は出来事内でも最強と見ている。
2-3マナの一番落としたくないアクションを埋めることができ、ショックモードは本体を対象にすればフィズることが無い。本体のサイズも高いマナレシオを誇り、ダメージ能力によって常に相手に不利な交換を強いる。

そんな最強の出来事を擁する赤単だが、同時に問題も抱えている。
鎖回しと変わり谷の共存だ。
鎖回しといえば言わずとしれた赤単のエースクリーチャーであり、このクリーチャーのおかげで、点対処を基本とする赤単の面への対応力は担保されている。
世の中には鎖回しを不採用とするリストもあるようだが、個人的には評価しかねるアプローチだ。
代わりに採用される3マナ域はゴブリンの熟練先導者がメジャーだが、よりサイズの大きいクリーチャーに弱く、cip能力を持たないため除去を当てられると3マナを無駄にする結果となる。
当然、対コントロール/コンボ戦においては鎖回しよりも明確に優れているのだが、現環境のトップはクリーチャー+除去が主体のデッキであり、環境的に優れているとは言い難い。
すなわち、赤単を構築するには鎖回しは外すことのできない必須パーツであり、それによって無色マナしか生成できない変わり谷とはディスシナジーを起こしてしまう。
なのでサンプルに挙げたデッキのように、変わり谷の採用枚数は2枚までに留める形がトレンドであり、今後も変わり谷の採用枚数が増えることは考えづらい。

一方の黒単は、変わり谷を4枚投入できる上に、出来事枠である残忍な騎士も4枚採用が基本形だ。

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サンプルリスト

しかし、今度は残忍な騎士の強さに疑問符がついてしまう。
前述の通り、出来事呪文の強さはマナカーブを埋める事によるものが大きい。
残忍な騎士は出来事とクリーチャーが同マナ域であり、クリーチャーのスペックが些か頼りない。汎用性を売りにする出来事呪文にしては、使いたいタイミングが限定的過ぎるのだ。

黒単の他の部分に目を当てると思考囲いや確定除去等によって、雑多なデッキへの対応力という点では全ての単色デッキに勝る。
マナベースに関しても赤単のエンバレス城に対して、黒単側はロークスワイン城を採用できる事から、継戦能力にも軍配が上がる。

赤と黒では部分的には差がつくものの、総合的なデッキの内容を比較すると、どちらが優れているとは言い難いように思う。
その中であえてベストデッキを挙げるとすれば、現状では赤/黒両方が苦手とするドレッジに対して、トーモッドでは無く黒力線を採用できる黒単に若干の優位性があるのでは無いだろうか。

4.まとめ

今回は単色デッキの強さの理由について考察をしたが、得られた結果としてマナベースが大きく寄与していることが分かった。
そしてこの傾向は、テーロス還魂記発売後にも見られる可能性がある。
既に公開されている通りテーロスで収録される土地は、有効色占術土地であり有効色のデッキが復権するとは考え難い。
現状では全てのカードが公開されている訳では無いが、パイオニアの勢力図を塗り変えてしまうほどのカードはまだ無いように思われる。

今後もGPやPTに向けてパイオニアを調整するのであれば、単色デッキに触れておくことには価値がありそうだ。

5.おまけ

今調整している黒単のリストを貼っておきます。
新しく変更があれば放送内で紹介するつもりなので、Twitchのフォローもよろしくお願いします^^

https://www.twitch.tv/1_3drop

キャプチャ

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