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Twitterのせいで死を覚悟した話

 自戒、備忘という意味で、以下記す。

 練馬区の公立中学校に通っていた中学3年生の時の話。今は知らないが、当時の練馬は猖獗を極める、刺激に事欠かない街だった。それを伝えるために、よく友人に面白おかしく話すエピソードが、「体育の授業があります、最初に準備体操をします、すると校舎から机が降ってきます。」というものである。机が降ってくる気候など地球上にはなかった気がする。ツンドラ気候では冬になると机が降ります、なんて書いてある教科書見たことあるか?

 2階から机を投げていた張本人である彼が逮捕されたという話を電話越しで聞いた。高校受験が目前に迫った、冬本番の寒い夜のことだったと記憶している。振り込め詐欺の受け子をした彼は、埼玉県警に逮捕された。

 僕と多少なりとも面識があれば容易に想像出来ると思うが、そういうネタがあるとつついてしまうのが僕の悪い癖である。僕は同級生間で噂が広まるのを待って、Twitter上で彼がこれまでしてきた悪行で打線を組んでしまった。5ちゃんねるのなんでも実況J板等で見かけるネタだ。参考までに「打線の組み方」を引用する。

 この調子で、彼を揶揄した。国語教師の分部(現在は結婚して高橋性になっているはず)先生の腹を蹴ったこと、僕の中学・大学の学部学科同期のあいうえおぎの君の骨を折ったこと、避難訓練の日に渡り廊下で消火器をぶっ放したことなどを打線に入れたと思う。「打線」の4番には最も強烈な事由を入れるのが慣例だが、「逮捕」と書いた気がする。

 逮捕されてから2週間後、思いのほか早く彼は娑婆に出た。上のようなツイートをした僕の料簡として、卒業までに彼が出てくることはないという確信があった。しかし、高校受験を目前に控えていたことを考慮されたのか、彼は釈放されたのである。特に少年事件の場合、断るまでもなく司法機関の役割は更生である。いくら彼がしでかしたことの重大性が明白でも、高校へ進学する機会を失わせることは、少年の更生を考えた際に適当でないだろう。これは納得出来る。しかし、この措置が一因で僕は死にかけることとなった。

 今でも交際があるK君に呼び出された日がいつだったかは、記憶が風化してしまった。2月か、3月か、高校受験は終わっていたか、そうでないか、中学は卒業していたか、そうでないか、もう思い出せない。

 その日はK君から携帯に着信があり「遊ぼうよ」と誘われた。違和感を押しとどめて誘いに乗った魯鈍な僕は「お札参り」に遭う。

 指定された練馬区谷原の某所に自転車で向かった。K君と合流し、ついていくと、小さな公園が現れた。そこは緑地に囲繞されており、住宅地の中に在りながら昼間でも人通りが少ない。只ならぬ雰囲気を感じ取った瞬間、僕は強烈に後悔した。そこには「彼」とその仲間。公園から少し離れた路上では、一つ上の見知った顔の先輩2人がバイクをタンデムして我が物顔で旋回していた。

 そこからは僕は殴る蹴るの暴行を受けた。

 「テメー俺で打線組んだだろ!」文字起こしすると間抜けだが、彼は激昂していた。K君は申し訳なさそうに僕がいたぶられているのを直視していた。K君はこうなることは分かっていたが、抗えなかったのだろう。僕にも良く分かる。さて、僕は何とか彼らを落ち着かせようとしたが、完全にキレてしまっている。コンクリートブロックで顔を殴打された瞬間、殺されると思い、対話は諦めた。僕は停めてある自転車を諦め、命からがら走って逃げた。

 警察に行くか迷ったが、自分の投稿が発端だし、どこも折れていなかったのでやめた。

 こうした経緯で、僕は骨の髄までSNSの恐怖が染み込んでいる。

 表現の自由とは、人を傷つける自由ではない。いかなる理由でも暴力には反対し抜くべきだ。

 僕はどちらの主張にも心から賛同する。

 最後に記事を1つだけ貼っておきます。

https://news.livedoor.com/lite/article_detail/8461958/

※この、「練馬区谷原殴打事件」の義援金を募集しております。投げ銭してくれたらめっちゃ喜びます。

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