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レクサスと爆乳の思い出

ドライブ中の一幕

レクサスは、トヨタ自動車が保有している高級車ブランドである。そのイメージと本記事のタイトルが結びつくと、LSの助手席に爆乳美女を乗せ、表参道でこれ見よがしにアクセルを踏み込む資産家を想起した人が居るかもしれない。しかし、今回はそういう話ではないし、僕はレクサスとは無縁の人生を歩んできた。これからもせいぜい型落ちシーマが良い所の人生であろう。

レクサスとは無縁でも、免許を所得してからはタイムズカーシェアや日産レンタカーで車を借りてドライブをする機会は多かった。人いきれで息が詰まりそうになる日中とは対照的な、杳としている深夜の都心を走るのは楽しい。静岡県内でのみ展開しているハンバーグレストラン「さわやか」へは約50回足を運んでいる。目的地はなく帰り道も忘れた車内で友人らと語り合ったことは、大学生活の大きな思い出だ。特に23区で生まれ育ち、父親の運転嫌いもあり家族が車を保有していない僕にとっては。

ある日のドライブ中、僕ら一行は例に漏れず渋滞に巻き込まれていた。苛立ちを吹き飛ばすかのごとく、窓を開け大音量で音楽をかけ、車内をカラオケ状態とする。多少通行人の視線は刺さるが仕方ない。相変わらず車は進まないが、iPhoneにシャッフルされカーステレオから流れ出した曲は『爆乳音頭』である。

これは、手島優さんら爆乳グラビアアイドル3人で構成された「爆乳三国志」というユニットが奏でる、爆乳についてテンポよく歌う曲である。話は脱線するが、僕はたまにこの曲をカラオケで歌うことがある。その場合、曲間に予約一覧が表示される際に「爆乳音頭」など出てきてしまったら出オチ不可避なので、曲名表示をオフにして予約する。(この機能をマスターすれば、よりカラオケが楽しくなることは僕が保証する)自分としては良かれと思ってやっているが、大体ルーム内の空気はヒリつく。曲を知らない人は末尾に貼るので一度聞いてみて欲しい。

渋滞の先に

繰り返すが、渋滞に捕まっていて僕らが乗っているレンタカーは停止している。不幸なことに、そこでヒリつく曲が流れ始め、横にレクサスの販売店があった。それだけなら何も起こらなかったのだが、不幸なことに1台の車がレクサスの販売店から車道に出ようと渋滞の切れ目を伺っている。納車の日だったのだろうか、それとも車両下取りの見積もりにでも来たのだろうか。車両の状態を記憶していないので不明だが、車の後ろには販売員が5名ほど扇状に立ち、深々と頭を下げている。

よせばいいのに、恬として恥じない僕たちはその状況でも歌い続ける。以下、一部歌詞を引用する。

おっぱい おっぱい おっぱい おっぱい でかい やばい
夢いっぱい
古今東西 老いも若きも みんな大好き (パイ パイ)
おっぱい おっぱい おっぱい おっぱい すごい でかい
魅せつけたい
鶴は千年 亀は万年 おっぱいだけは 永遠だから...

推測であるが、「LEXUS」という文字列が放つ厳かさを守るために、販売員に対して徹底的に施されている研修カリキュラムが存在するだろう。この研修で身に付く所作は一朝一夕に身に付くものはないだろうが、「お客様をお見送りしている最中に爆乳音頭を爆音で流しつつ乗車定員5名全員が歌詞を怒鳴り散らしている車が停車している状況」には対応していないのだろう。その証左に、販売員は無抵抗で僕らの合唱を浴び続けた。おそらく、お客様の車が完全に見えなくなるまではお辞儀を続けるように徹底教育されているのであろう。僕らを無視しようにも出来ない状態で笑いを堪えつつ、美しいお辞儀の姿勢と「LEXUS」のブランドを同時に保とうと踏ん張る姿には、プロフェッショナリズムというものを感じずにはいられなかった。女性販売員など、肩を震わせながら必死に姿勢を保っていた。お客様の所在を確認するためか、祈るように一瞬顔を上げた彼女が横隔膜を追い込み過ぎたのは明白で、顔を真っ赤にしていた。

ようやく車が動き出した。

乗ったことがないにも関わらず、「レクサスは性能の割に価格が高すぎる」などと訳知り顔で発言したこともある。だけど、僕が認識するレクサスのイメージに、この経験が影を落としているのかもしれない。ちなみに僕はMarkXとMazda6が好きです。

販売員の方々に心よりお詫び申し上げます。

●爆乳音頭


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