『いま、女として-金賢姫全告白-』 金賢姫(1994)文藝春秋

1987年、金勝一(スンイル)と共謀し、大韓航空機爆破事件を起こした女性の手記。

 彼女が北朝鮮で育つ過程で、宗教は迷信であると教えられていた。最初に拘束されたバーレーンにて、決まった時間に礼拝をする回教徒が印象に残っていたようで、北朝鮮に暮らす人々と比較する記述をしている。

工作員から市民まで皆、三大革命規律(生活規律・組織規律・事業規律)に背く行為がなかったかお互いに批判しあう「総括」をさせられることを勘案すると、「無宗教国家北朝鮮」の戒律は、数多の宗教の中でも類を見ない厳しさである。

毎朝、金日成元帥様万歳(キムイルソンウォンスニムマンセ)と叫ぶ大学生。「引っかかり」(金一族とのコネ)がないと生活すらままならないのではないか。

僕がいずれソウルに降り立つ時のことを想像してみた。彼女が金浦空港に降り立った時、あるいは捜査員に連れ出されソウル市街を歩いている時に感じたという、南北の同質性を感じることが出来るのだろうか。

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