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レイヴの話

「どう言えばいいか分からないことを、まなちゃんが言ってくれる。話しやすい。」

そう言ってくれた子と、電車で別れる時泣きそうでそっぽを向いたのを悔やんでる。




初めてのレイヴは緊張と恐怖で2枚分買ったが、一緒に行ける友達もいないので1人で行った。
2人分楽しまなければと鼓舞するが、昂りすぎてバス出発時間1時間半前に駅についてしまう。



「ゆるふわのバスってここですかね」
話しかけてくれた女の子にバスを教え、1人で行く緊張と初めてのレイヴが共通し話は盛り上がった。
タイムテーブルをairdropで共有する時、iPhoneの名前が「きらりっち☆」だったので「きらりちゃん」と呼ぶことにした。偽名も偽名だ。

なんとなくで「きらりっち☆」にした彼女と、なんとなくで「14pro」にしたSE2世代目を使う私。




「きらりちゃん」の名前が気に入ったらしい本人は、「私はなんでも下手だから、本当にきらきらしてるように感じる。きらりちゃんって呼ばれるの嬉しい」と控えめ。
話しかけてくれたお礼にお菓子を半分こしたら、その後全て奢ろうとする《義理堅さ》を発揮しはじめた。

人情に厚い彼女を、私は下手なんて思わない。




ゆるふわと踊ってばかりの国のコラボ曲はかなり盛り上がり、踊ってが好きなきらりちゃんと、演奏が終わったあと思わず勢いでハグをした。
2人の目は誰が見ても輝いていたし、2人とも汗をかいた身体はあつかった。
左目からずっと涙がでてた。




他にも友達が出来て、メリーゴーランドに乗り、乾杯をして、音楽を聴いて、たこ焼きを分け合い、お互いの事を語り合い、朝まで踊った。
異国のようであり、映画の中でもあり、人の夢に入ったような夜だった。




霞んだ朝がきて、帰りのバスの中ではくたびれて眠りこけた。
「優しい」「好き」「ありがとう」「また会いたい」「勇気がでた」
色んな言葉を探してる内に、別れの駅がきた。
人の気持ちを言葉で表現するのは得意なのに、肝心の私の言葉は「寂しい」しか出てこなかった。

泣きそうな顔を見られたくなくて、まともに手も振れなかった。
すぐに走ってしまった。





踊ってばかりの国のライブに行く予定ができた。
きらりちゃんは、ほんとうに、きらりちゃんだったんだ。

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