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エイリアン

梅雨が終わる前に夏が来た。



彼は「俺は宇宙から来たエイリアンだ」と言った。
そうやって自分のアイデンティティを表現する気持ちはわかる。
だってそれを本能レベルで通じ合える人にしか言わないから。


彼はデザイナー。これまでデザインしてきた誌面やパンフレットを綺麗にファイリングしたブックを見せてくれた。一つ一つのデザインに纏わるストーリーを聞かせてくれた。ロマンを感じる。


誰もいない雨上がり。
ライティングが綺麗な夜中、青いカクテルを飲みながら2人は並んで座る。

彼は恐らく完璧主義のバリキャリマン。AB型だって言ってたな。


いろんな世界を見てきているはずだ。そんな彼に「面白い」だの「摩訶不思議」だの言われた。全てこちらのセリフなのだ。
でも少し嬉しい。ひとまず、彼の懐に入り込めたようだ。


彼と感性が似ていると感じた。そういう時特有の暖かさを感じる。恐らく、放っているオーラの熱量みたいなものがリンクしている証拠。


彼の言葉選びや間合いの取り方が心地良い。


帰ってから電話をくれた。不意打ちはこの先をわがままにさせるからやめてほしい。


彼は翌朝たまたま近くで用事があってついでに顔を出してくれた。

会話の中で「人たらしなんだろうね」って言われた。腑に落ちた。初めて言われたのに、妙に納得した。

だから彼をやめられない。今まで言葉で表現出来なかったことを彼は簡単に言葉で表してしまうから。

これからのことが楽しみだし、その代わりに何かを失うかもしれない不安を抱いて、眠りにつく。

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