芸人人生 第四十六話 ヨンタモニカ

「ここか。」

エビス今宮のオーディション会場に着いた。

何やら文化会館の様な所を貸し切っているようだ。


中に入ってみると廊下では芸人達がネタ合わせをしている。

もちろん見た事ない人ばかりだ。

どうやら’午前の部’の真っ最中な様で

静かにみんなネタ合わせをしている

「ここか?楽屋は」

ガネが先頭を切って前を歩いていると、オーディションの教室な様なのが目に入った。

「いやーいきなりなんですけどね!、」

教室をちらっと覗くと、ネタの真っ最中。

その中では芸人達が衣装に着替えていた。

驚いた。

オーディションのネタ見せと楽屋が一緒だ。


教室はぎゅうぎゅうとなっている。

みんな衣装を着替えながら、チラチラとネタを見ていた。


芸人に見られながらネタ見せをするとは
まるで養成所の授業の様だ。

だが、授業とは違って携帯をいじってる人もいれば、静かに談笑している人もいる


「あれ?アシスタントの先輩や」

上松がボソッと言った先には
普段俺らの授業のアシスタントをしてくれる先輩も居た。

(そうか。先輩達もテッペン目指してるんだな。)

俺はまだ’上の先輩’達を全く知らない。

知っていると言えば、アシスタントの先輩達だけだ。

スタッフさんの様な存在だと思っていた。

初めて衣装を着てる’芸人’の姿を見た


「とりあえず着替えよっか。」

そう言ってたこやきは女子トイレに衣装を持っていった

「俺らも着替えてネタ合わせしようぜ。」

カゲガラスも廊下の方に衣装を持って教室を出た

みんな少し表情を変えた。

(本番だ。勝つためにここまで来たんだ。)

俺もスイッチを入れた


「どーーもー!!」

また違う組のネタ合わせが始まった

「ども!!ヨンタモニカですお願いしまーす!!」

(ヨンタモニカ!?)

ウチらの’選抜組’のヨンタモニカだ。


俺はすぐに衣装に着替えるのをやめて

ネタに釘付けになった

「僕が’ライム’といいまして!こっちが’低橋’です〜!」

(ライムと低橋。)

おそらくライムの方がツッコミ。
シュッとしていて、元気がありハキハキと喋る。

低橋は身長は小さめだが、ガッチリとしている。
ラグビー選手の様な身体付き。目がクリクリで
表情が豊かでいかにもボケという感じだ

「低橋くんも挨拶お願いしていいかな?」

「お腹痛いです。」

「そんな事言わないで〜〜!!!!」

ヨンタモニカは俺らとは全く違う漫才をする

簡単には言えば’コミカル’だ。

ボケでも笑えるしツッコミも少しクセがある。

「いきなりなんだけどさ低橋くん、女の子とドライブ行きたいなーと思って。」

「俺もそう思ってたんだよね。」

「すっごい偶然だね〜!!じゃあやろうやろう!」

ライムは喋りも上手いし、身ぶり手振りが綺麗だ
声のキーも高いのが良い

「ブーン」
「ブーン」

『お待たせー!』

「どっちが女なの〜!!!」

「捕まえてごらん〜」

「捕まえてごらんじゃないのよ〜それ待ち合わせでやるのよ〜!」

低橋は表情も動きも上手い。


俺はヨンタモニカのネタに釘付けになってしまった

(これが’5強の1組’、、ヨンタモニカ。。。)


「どうもありがとうございましたー!」


負けてらねぇ。

ヨンタモニカのネタが終わると同時に俺は衣装に着替えてネタ合わせを始めた。

上松も気合いが入っていた


絶対勝つ

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