鎖~繋がれた絆 chain1-2

「いらっしゃ…!!なんだお前らか」

小さなラーメン屋ののれんをくぐると、半袖に白いタオルを巻いた植松が居た。

植松正太(うえまつしょうた)
俺の高校の同級生。
地元の高校に入学したが周りの奴らと馴染めなかった俺の数少ない高校の友達だ。
もちろんヤザとはそこまで認識は無く、こういう時に顔を合わせるくらいだ。

「ラーメン大盛り2つ!ライスも!」

俺は”いつもの”のテンションで厨房にいる植松に告げた。

「お前勝手に決めんなよ!」

「ラーメンしか旨くないんだよ」

「なるほど。」

「納得すな!半チャーハン付けてやるから食ってみろ!」

厨房から植松が顔を突っ込ませた。半炒飯作戦成功だ

「にしてもー、最近”あいつら”と会ってるか?」

ヤザが首に掛けたタオルで額の汗を拭きながら言った

「まぁーボチボチだな。”和泉”とはちょこちょこ会ってるよ」

「あいつ最近地元でバー開いたんだよな。なんだっけ?名前。」

「”凪”(なぎ)だよ。バーぽくねーよな。」

「煮干し系ラーメンじゃねぇかよ。昔よく行ったよなぁ」

「好きすぎて付けたらしいぞ。アホだよな。」

和泉壮(いずみそう)
こいつも小学校の幼なじみ。アホでバカで騒がしいやつだ。それでも和泉といると悩んでる事もアホらしくなってくる。

「最近ちょこちょこ和泉のバーに行くけどぜんっぜん客入ってねーよ!」

「こんな下町にバーなんて出しても行く奴居ねーだろ。」

「うぃ!ラーメンと半炒飯な!」

俺らの前には昔ながらの醤油ラーメンに綺麗に丸まった炒飯が目の前にドンと置かれた。

『いただきまーす!!』

俺らはラーメンを勢いよくすすりその勢いで炒飯も口にかきこむ。まるでタイムリミットがあるかのようにとにかく手を止める事はなかった

「あぁー旨い。植松やっぱ旨いわ。」

植松は、「だろ?」と言わんばかりのドヤ顔を見せた

「あ、そうだ。知ってるか?”石井”がYouTuberやってんの。」

ヤザは小さいコップに入った水を一気に飲み干して思い出す様に言った

「あー和泉に聞いたよ。あいつ昔からほんと大事な事言わねーよな。実は実家が金持ちとか、勝手に大学中退してるとか、外国人に片思いしてたとか!!」

「外国人女!?あいつ国境を超えたのか!!?」

「半年くらい前に会った時に言ってたぞ。フランス人だってよ。それっきり会ってねーなぁ。」

ヤザは携帯で”フランス 女”で検索していた。

石井航平(いしいこうへい)
幼なじみ。大人しそうな見た目だが
よく喋ったり笑ったり、いきなり自分の世界に入り込んだり。
自由奔放で少し変わったやつだ。

「しかも石井YouTuberで飯食えてんだぜ?登録者数30万。すげぇよなぁ。」

ラーメンを食べ切ったヤザは満足気な顔をしていた

「時代もだいぶ変わったなぁ〜外に出て働く時代は終わったのか?」

「YouTuberも大変らしいぜ。生きるっていうのは大変だよ。”良い事”ねーかなー」

俺は毎回思う。人が発する”良い事”。
良い事ってなんだろうって。関係ない話だが。

「まぁ。みんなどっかでなんかやってんだろ。見えない所で頑張ってんだよ。」

「あ、そういえば菊池、”千田”と連絡取ったりしてるか?」

植松が厨房から姿を出して割り込む様に会話に入ってきた

「千田…いや。高校卒業してから連絡は取ってないけど。元気してるのか?」

「いや、俺もこないだ久々にLINEしたんだけど既読も付かなくてよ。何かあったのかなって。」

千田大成(せんだたいせい)
高校の同級生
俺と千田と植松でクラスが同じだった事をきっかけに学校では3年間ずっと行動を共にした仲だ。
友達思いで思いやりのある心の優しい奴だった

「千田…まぁ…!どっかで元気してんだろ!俺も連絡取ってみるわ!植松御馳走さん!」

「おう!またな!」

千田は高校を卒業して大学の進学の為東京を離れた。そこから連絡も取れてないままだった。

そして俺はヤザとお店を出た。

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