芸人人生 第98話 最高の同期

俺らは宿に着きひとまず休憩。

とはいかない。

一度きりの大阪の夜。

疲れたとは言ってられない。

大浴場に俺らは勢いよく飛び込み、水が勢いよくハネるが関係ない。

なんせ宿は俺らで貸し切り。やりたい放題だ。

「矢沢のちっちぇぞ!!!!みんな見てみろ!」

「うっせんだよ!!テメェら!!」

矢沢は大浴場のツルツルの床をロケットの様に滑ってみんなにアタックした

もうみんなは泳いだり滑ったり水をかけあったり
まるで修学旅行。

ライブなんて、とうの昔の様に。

芸人というのはこの先

幾多の戦いがある。

一度の敗北で人生が終わったように思っていたら

正直やっていけない。

心のどこかにスペースを作っておくことが必要。

悔しい気持ちのスペースを。

そんな気持ちをしまいながら

俺らは笑って面白いことを追求していくのだ。


大浴場からは次々と出て、誰も居なくなり静かになる

こんな同期大勢で大浴場に入る事など

もうないだろう。


俺らは急いで着替え、みんなで夜の街にお酒を買いに行く。

だが急にはぐれたり、連絡繋がらなくなるし、まとまり感はない。

パチンコ行く奴もいればたこやき食いに行ったり、
みんな自由だ。

宿に戻り、周りを入れば消えてしまった同期もちらほら。

夜の街に吸い込まれる様に行ってしまったのだろう。

残った奴らで乾杯。

ここからは矢沢が大暴れ。

大部屋で飲んでる最中にも関わらず、電気が真っ暗になる。

誰かが電気をつけると、矢沢がターゲットにした奴の上で全裸でプロペラの様に回ったり、

めちゃくちゃをするくだりが始まった。

まるでくだらない遊びにどハマりした子供の様に

電気が消えて、付いては矢沢がプロペラに。

何度も何度も。

俺も餌食となった。ケツをもみくちゃにされ。

最後はお決まりのプロペラ。

暴走した結果、矢沢は禁じ手の行動に出るが
あまりにもコンプライアンス違反の為カットしよう。

この電気が消えては付いての矢沢の暴走劇。

矢沢は暗闇になればチャンスと言わんばかりに嬉しそうに襲ってくる。

このくだりについた名は

“チャンスタイム”

最初で、最後になるだろう。

途中で帰ってきた川井と腕蔵は風○帰り。

酒で潰れる奴。呑気に飯食ってる奴。

表では言えない暴露話をする奴もいれば

お笑いの熱い話をする奴も。

もちろん熟睡する奴も。

そんな23期は


“最高だった”


人間誰しもいつかは寝るもの。


気付けば朝に。


バスに乗れば、眠さも辛さも全て吹っ飛ばして

‘お笑い’に。

嶋田がバスに置いてかれるや、たこちゃんがペットボトルにおしっこもらすわ

ハチャメチャだ。


それでも。この仲間達は一生ものだ。

この思い出を。一緒に居た日々を。

全て東京に持ち帰る。

悔しさだけは、大阪に置いて帰った。


「万田。」

「ん?」

「次がんばろうぜ。」

「おう。」

万田も少しずつ笑顔が戻ってくる。

それは周りの同期のおかげだ。

こうしてお笑いバスは揺れながらも

無事東京に着く。

一つ屋根の下で寝た同期達は皆それぞれ自分の家へと帰っていった。

そして

翌日。


みんなが揃って言う。

『死ぬほど寝た』



東西対決戦〜大阪の巻。

これが今年最後のライブとなった。

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