鎖~繋がれた絆~ chain3-1

「いや〜助かったわ村田!てか久しぶりだな!元気してたか!!」

俺らは危機一髪。たまたま村田が乗っていたタクシーに救われて生き延びた

何やらここらへんでタクシードライバーをしているそうだ。見た目が真面目な感じにその姿は様になっていた。

「そういえばお前”教師”やってなかった?数学の」

後ろの席の真ん中に座ったヤザが前に身体を乗り出した。両端の河井と和泉は窮屈そうにしている。

「あーやってたよ。ちょっと合わなくてな。そんで去年俺結婚したじゃん?そのタイミングでタクシー会社に勤めたんだよ」

村田は俺ら幼なじみ7人の唯一の婚約者。去年嬉しそうに連絡があったのを思い出した。

「東京だと物件高くてな、こっちの方に家買ったはいいけどローンキツくてよ。」

村田はボソボソと話すのが特徴的だ。俺はそんなボソボソした会話をまたもやぶった切って俺らの状況をザックリ説明した。さすがの村田も声を特大にしていた

「一億盗まれただけで気絶しそうなのに、借金取りにまで追われてるなんて。お前ら相変わらずだな。」

「村田も助けてくれや。昔助けてやったやろ。」

「和泉は逃げただろ。店はどうした?もう閉めたのか?」

「閉めてるわけないやん。まだ1か月よ?めっちゃナメてるよね?」

「ヤザは工場でマイムが探偵。拓也が社長か。みんな頑張ってるよなぁ〜」

「村田!Uber eatsの俺忘れてるよ!」

「お前はまずチャリから降りた方がいい。でも1番凄いのは石井だよな〜」

「まぁ下手したら1番稼いでるかもな〜てか今日は全員集合か!?」

ヤザは腕を組みながらニヤッとした

「全員集合は無理だろ〜なんせ石井は”芸能人”だもんな〜」

「芸能人?YouTuberだろ?」

俺は助手席から運転する村田に問いかけた

「”元”YouTuberな。あいつ明日からタレントになるじゃん。」

『ええぇええぇぇぇ!』

車から”ええぇええぇぇぇ!”と字幕が飛び出しそうな勢いでみんなが驚いた

「お前ら石井から聞いてないの?」

『あいつが言わねんだよ!!』

俺ら4人は口を揃えた

「タレントって…あいつどっかの事務所でも入んのか?」

「ほんと知らねーんだなぁ。」

キキー

数少ない赤信号に車は止まった

そして村田の一言で俺らの動きは急展開する。

「芸能事務所に所属しただろ。あの有名な”松プロ”に。今日社長と打ち合わせって言ってたぞ。」

ピカッ!

信号が青になったと同時に俺らはひらめいた

松井が地元で打ち合わせ

石井が松プロに所属

松井と石井が打ち合わせ中。ということは。

『石井ー!!!!!!!!!!』

「村田!!!路地裏に行け!!速攻石井に電話!誰か早く!!あいつは俺らの”光”だ!!!」

俺らはすぐに”光”に電話を掛けた

「フレッツやん」


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