鎖~繋がれた絆~ chain2-5

「で、どうすんだよ拓也。」

「どうするって…一億は見つけねーとよ。相手はヤクザもんだし。取られました。じゃ済まねーだろ。」

「って言っても完全に見失ったし。借金取りに追われてるし。もう松井に電話した方がいんじゃねえのか?GPS確認出来んのそいつだけなんだろ?」

「まぁな、つっても取られましたなんて言えねぇよ。信用が」

「信用なんて今いいだろ、プライドは捨てろ!1億だぞ!どうにもならねぇよ」

「確かに。拓也。ここは電話したほうがええって。一緒に謝ってやるから。」

タバコの火を消して和泉と河井も会話に入ってきた

「とりあえず優先順位は一億だ。俺の借金なんてどうにでもなる。なんとかしよう。」

河井を長い髪を縛って、顔をキリっとさせた

「懐かしいなぁ。昔不良に絡まれた”村田”を助けに行ったときあったよな。みんなで。」

矢澤が星空を見ながら言った

「あーあった、あった。みんなで行ってな。高校くらいの時か。村田がどんくさいからなぁ」

俺はもう一度タバコに火を付けて煙を吹かせた

「てかその時和泉居なかったよな?逃げたんだっけ?」

河井が馬鹿にする様に指を差す。和泉は慌てて否定していたが完全に”逃げた”。和泉は大事な場面で逃げ癖があった。

そこからだった。和泉と石井の仲が悪くなったのは。もう10年も前の話だが。

「和泉の事見張っとけよ、いつ逃げるか分からねぇからな。」

「ヤザ。この田んぼに植えてもらって構わんよ?仲間が困ってる時は命懸けるんよ。オッケー?天パーちゃん?」

「今マイムもこっちの方に来てもらえる事になってる。あいつはかなり頼れるからな。」

「おいおい俺らが頼りにならんみたいやん。」

「それにしても田舎は静かでいいなー。またみんなで毎日遊びてぇなー。そうだ!田舎で0からやり直すか?」

「馬鹿。俺は社長だぞ?マイムも1人でやってるし、石井はYouTuberで稼いでるし、みんなもう今を生きてんだよ。もう馬鹿な事してらんねーよ」

ヤザと和泉は俺は俺はという表情でキョロキョロしていた

「いいよなー俺はUber eats一本よ。もう疲れたよチャリ漕ぐの」

「一本なやついねーだろ。」

「第一こんな田舎じゃ何もする事ないやろ。車もブンブンブンブン聞こえてくるしよ。」

「こんな時間に。エンジン音吹かせてな。」

ブォンブォン

夏の夜。気持ちのいい風が吹いて。虫が鳴く。

そこにエンジン音がドンドンと俺らのもとに近付いてき
車のハイライトが俺らを照らして猛スピードで向かって来た

「おい、まさか。」

「嘘やん。」

「あいつらだぁ!!!!!車に乗れ!!!!逃げるぞおおお!!!!!!」

俺らは急いで車に乗り込んで猛スピードで車を走らせた

「やばい!!こりゃ捕まる!!拓也!急げ!!」

ヤザが助手席から鼻息を荒くして首を右往左往曲げながら俺に言ってくる

「お前ら!!しっかり捕まってろ!!」

車はボンボン跳ねる。後ろの席にいる和泉と河井は抱き合って悲鳴を上げていた

ブォンブォン!!!

白いセダンが俺の運転席側に並走した。相手の助手席の窓が開くと金髪の奴が何か声を荒げている

多分「止まれ!」と言っている。止まるわけがない

「おい、ケイト。窓閉めて後ろに行け。ぶっ殺すぞこいつら。」

「兄貴分かりました。」

金髪のケイトが後ろの席に素早く移動した

「誠也。すぐあいつらとっ捕まえるぞ。」

「おう。」

おそらく運転している兄貴というやつの手下であろう。金髪ケイトと爽やかイケメン誠也の2人が戦闘準備をした。

「行くぞおおお!!!!!」

ブォンブォンブォン!!!

ドカーン!!!!!

「うおおおおお!!!!!!!、こいつら!!殺す気かよ!!」

借金取りの車が勢いよく真横から俺らの車に突撃してきた。

和泉と河井が必死にうつ伏せになって命を守っている。ヤザは絶叫していた

ドカン!!!キキー!!!!!!

ドン!!!ブーーン!!キキー!!!!!!ドカーン!!!!!!

壮絶な車のぶつかり合いに俺はハンドルを握るので精一杯。だんだんと握力が弱まっていくのが分かった。

次に来たら俺らの車は。

田んぼにズドンだ。

「覚悟しやがれ!!!うおおおおお!!!!!!!」

来る!!!!!!

「兄貴!!!前から車…!!!!」

「やばい!!!」

ドーーーン!!!!!キキーー!!!!

パァー!!!!!

大きなクラクションが鳴り響いた

時が止まった

前の車のライトが眩しくて最後の一撃を俺らは食らって力尽きた。車内は悲鳴が上がった。そのまま車のフロントから田んぼに突き刺さるように突っ込んだ

そして、それと同時に借金取りの車も前の車によって勢いよくハンドルを切って俺らの反対側の田んぼに
これまた勢いよく突っ込んだ。

ハッと野生の脳が働いた。”このままじゃ捕まる”

不幸中の幸い、車は横転する事はなくすぐにドアを開けれた。ヤザ達に声をかけすぐに外に出るように声を荒げた。頭や腕を押さえながらゆっくりとみんなが車内から出てくる。

「おーーい!!大丈夫か!?」

おそろく前の車を走っていた運転手が慌てて降りてきたようだ。相手などしてられない。この足で逃げるしか…

「拓也?」

前の車はタクシー。
タクシーの運転手は小学校の幼なじみ
村田優斗(むらたゆうと)

奇跡が起きたと、はしゃいでる場合もなく

とりあえず俺らは一心不乱に走りタクシーに乗り込んで車を走らせた

後ろから借金取りは走って追いかけて来るのが分かったがしばらくすると足を止めて諦めたのが分かった

「ハァ…ハァ…くそっ!!」

「兄貴…!ハァ、ハァ大丈夫ですか!?」

「早く車引き上げろ、追いかけんだよ!!!」

『はい!!!!』

手下のケイトと誠也は田んぼに向かい車を動かしては押して脱出を計った

兄貴と呼ばれる男はタバコに火を付けてその場に座り込んだ

「フゥーー、あの髪の長い奴…。。。

河井か?」

借金取りの兄貴
小野澤(おのざわ)

河井の高校の同級生だった。

chain 2 完




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