キーエンス~驚異的な業績を生み続ける経営哲学(読書メモ)
「そらぁ、キーエンス強いわ」
と読み終わった後に率直に思ってしまった。
一橋ビジネスレビューに掲載された記事の抜粋のためページ数は少ないが、同社の経営哲学である「付加価値の最大化」に向けた考えや取り組みが端的に纏まっている。
正直なところ同社については、高年収の超優良企業と認識していた一方で、分単位でスケジュール管理されるなどマイクロマネジメント下でハードワークを要求される企業という印象だった。
ただ、本書を通じてマイクマネジメントではなく、①合理化、②仕組化、③主体性、の3点を徹底している企業だという印象に変わった。
まず合理化で印象に残った点として、同社では何事においても数値化されている点だ。抽象度が高い言葉を具体的な数値に置き換えることで、社員の意識を高める取り組みは非常に参考になった。
キーエンスでは、役立ち度(付加価値)に関して目標とする数字がある。それは商品企画段階での「粗利80%」である。
社内的に、各社員が1時間当たりに創出すべき付加価値額が決めれている。これは「時間チャージ」と呼ばれ、今年度の計画粗利額を全社員の総就業時間で割り、役職によって調整した額である。
大きな会議を開く際やプロジェクト構成を計画する際も、人件費がこのチャージ額で計算される。
次に仕組化で印象に残った点としては、社員のスキルに関係なく全員が履行できるようシンプルな設計にしている点だ。
⑴ 顧客事例集
全国の営業担当者が、特に顧客が喜んでくれた機能や使い方に関する事例を、本社の販売促進部にフィードバックして一般的なアプリケーション事例として編集することで、類似品を扱う顧客へ横展開する。
⑵ 製造工程の教科書
キーエンスの顧客を業種別に分類し、それぞれの機械と仕組みなどが詳しく解説された内容となっているため、顧客のものづくりに関連した知識・情報を詳細に知ることができる。
⑶ ニーズカード
営業担当者が顧客が困っている点や欲しいと思っている機能などに関する情報を、商品開発や商品企画に対してフィードバックするため、ニーズカードと呼ばれるフォーマットを使って毎月2件提出する。
最後に主体性で印象に残った点は、社員1人1人が考え抜くこと徹底的に求めている点だ。そして、この考えを元にマネジメント方法や評価方法が設計されてる点も印象に残った。
組織的なポジションや役割分担とは関係なく、最も徹底的に考えた者が決めるのがよいということ。
少しでも大きな付加価値を創出するための方法を考え出すためには、通常の役割分担では不適切な場合が少なくない。真の「企画」が必要なのであり、それが最もうまくできるのは、最大の問題意識と情報を持ち、最も真剣に考えた人である。
目的をきちんと説明しない限り、アイデアや工夫を考案することはできない。背景や目的をきちんと伝えることは、長期的には効果が大きい投資。
キーエンスでは、成果だけでは評価されない。その人独自の新たな工夫や提案、および行動がどれだけその成果に貢献したかが評価される。
同社を一言で表すならまさに「凡事徹底」だと思う。
明確な経営哲学のもと、決めたことをやり抜く強さを感じる一冊となった。
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