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考える前に手を動かせ

2021年5月10日
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第5回
【講師】株式会社ソフトディバイス 代表取締役 八田 晃さん

講師プロフィール

八田さんが代表取締役を務められている株式会社ソフトディバイスは、ヒューマン・インタフェース・デザインを核として、未来の製品やサービスのあり方を考え創造するデザインコンサルティングファーム、とのことです(HP抜粋)。

八田さんは2008年に同社の代表取締役に就任され、Labの設立等を手がけられてきました。

ちなみにソフトディバイス社は京都の北山にオフィスがありますが、安藤忠雄さん設計のおしゃれなビルです。学生時代に近くに住んでいたので、勝手に親近感を持ってしまいました。
https://www.softdevice.co.jp/





プロトタイピング

ソフトディバイス社はプロトタイピングに強みを持っている会社で、さまざまな会社の未来の姿を描くサポートをされています。事例としていくつかご紹介されていたので印象に残ったものをご紹介します。

1.パナソニック「Wonder Life-BOX」
パナソニックの未来の生活を体験できるショールーム「Wonder Life-Box」をソフトディバイス社は手がけられたそうです(Webが見つからなかったので現在は終了していると推測されます)。

この施設、面白いのはパナソニックの大掛かりなプロトタイプになっており、実際に来場者に体験してもらった後、フィードバックをもらって将来のサービス作りに活かしていく、という狙いがあったようです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001806.000003442.html

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他にもPanasonicさんの案件が複数あり、関係が深そうです。


2.Toyota Fine-Comfort Ride
トヨタの水素自動車のプロトタイプも手がけられています。車の中の空間を座っているだけの空間ではなく、「コミュニケーション空間」としてデザインされているそうです。確かに移動中にこの空間にいると色々アイディアが浮かんできそうです。将来是非実装して欲しいですね。

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Predicting the Future by Making

八田さんは「従来のデザインのプロセスで顧客を観察しても、未来の家や車は出てこない」と仰られており、ソフトディバイス社では「Predicting the Future by Making(作ることで未来を予測する)」という考えをされているとのことです。 

Alan Kayの"The best way to predict the future is to invent it.(未来を予測する最も確実な方法は、それを発明することだ)”という言葉も引用されていましたが、とにかくプロトタイプを作りながら考えを深めて検証していくべき、との主張です。

これは私たちが入学してからこっぴどく言われている「作りながら考えよ」という教授陣からの教えと同じ考えであり、実際のビジネス現場でも同様の手法が使われていることを大変嬉しく思いました。

八田さんからはプロトタイピングの代表的手法として「ペーパープロトタイピング」や「インタラクションモック」等をご紹介していただきました。これらの手法はそれらが使われている特定のシーンを想起させることについては有効とのことです。

一方、さらに深い洞察を得るには人の"Behavior(振る舞い)"を見るべきとのことで、最近では“Acting Out”という手法をお勧めしているとのことでした。

Acting Out

Acting Outは直訳すると「身振りで表す」という意味ですが、八田さんは「演劇」と言い換えておられました。

簡単なプロトタイプを作り、それを使用するケースを複数人で演技しながら検証するという手法です。

時間もコストもかからず、かつ簡単にできるので(あと面白そう・・)、実際のビジネスシーンでも活かしやすいのではないかと思いました。自分の業務でも取り入れてみたいです。

さらにこの手法の発展版として"Projection Modeling"をご紹介いただきました。

こちらはさらにコストがかからない方法で、プロトタイプのモノさえも作らず、プロジェクターの映像を投影しながら使用ケースを検証するというやり方です。
(プロジェクターを手持ちしないといけないので軽いプロジェクターは必要そうです・・)

ビジネスパーソン(含む私)はモノを作ることができない(または時間がかなりかかる)ので、PPTなどで画像をささっと作ってプロジェクターで投影する手法はさらに実用的だと思いました。こちらも是非業務で使ってみたいです。

UX Lab

八田さんはこのような自分たちである程度作れてしまう実用的なプロトタイプをその場で作り込めてしまうUX Labを2011年に設立されました。
場所はソフトウェアディバイスの北山オフィスの地下にあるようです。いるだけでワクワクしてくる内装で、面白いアイディアがどんどん出てきそうです。

ここで先程のProjection Modelingを大掛かりに実施できたりとか、ソフトウェアディバイス社のデザイナーさん達のアドバイスも頂きながらプロトタイピングを進められるようです。

ここで最も重要視しているのは"Live Editable(その場でどんどん変えていける)"です。作ることによってアイディアが発散されていくため、どんどんプロトタイプも変えていけるようにされているそうです。

値段気になります、、予算合えば一度業務で使ってみたいです・・。


所感・まとめ

八田さんたちの最大の特徴は、自分たちのノウハウを惜しみなくクライアントに伝えて、クライアント自身でデザインをできるようにサポートしている点だと思いました。自分たちで丸々請負えば売上になるところをあえて取りにいっていません。

謂わば「デザインの民主化」であり、非常に面白いビジネスモデルだと思いました。昨今ノーコード(プログライミングの民主化)やオンラインショップ(ECの民主化)なども出てきていますが、それに近いのかなと。

プロトタイピング(手を動かしながら考える!)は日本の企業に一番欠けている点だと個人的に思っていますので、今後ソフトウェアディバイス社の取り組みは非常に価値が増してくると思います。

私は日本企業にデザイン経営をどうすれば浸透させていけるか、日々試行錯誤していますので、ソフトディバイス社と八田さんの動向を今後ウォッチして行きたいと思います。

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