車に無関心な妻が「ファミリカー欲しいね」と言い出した

愛妻の萌ちゃんは車に興味・関心が無い。皆無だ。彼女に言わせてみれば、タイヤが4つあって雨風を凌げて荷物をたくさん積めて移動ができれば良いとのことだ。そしてそれらがいくらで売られているか知る由も無い。

他方わたしは車好きで、中でもスポーツカーを好んでいる。子どもが産まれる以前から定期的に「これ欲しいなー、買っていい?」とフェラリー・ポルシェ・アストンマーチンといったスーパーカーをおねだりし続けている。無論お許しをいただけるはずは無い。

そもそも我が家は貧乏だ。けれども高額過ぎるという問題を横に置いたとしても、おでかけグッズとベビーカーを積むスペースの無い車なんぞ論外だと彼女は言う。愛する家族のため、妻の意見を尊重するのは夫としての責務である。

子どもが2人になり、家族感が増してきた頃。萌ちゃんが「ファミリカー欲しいね」と言い出した。彼女の言う「ファミリーカー」が一体どんなのかはわからんが、車を購入するまたとない機会が巡ってきた。

わたしは愛妻ご所望の「ファミリーカー」を提案すべく、近所のランドローバー社なるディーラーへ家族で訪れることにした。

仕事が出来そうなシュッとした営業マンが担当してくれた。案内中、萌ちゃんが好きそうな色味の車に差し掛かった。レンジローバースポーツHSE(中古車)のブロンズカラーだ。わたしはこれが販売中と知っていた。事前確認した上での来店である。

車に興味・関心が無い人にとって車種の違いなどどーでもいい要素であり、愛妻は必ずこの色の車を選ぶと確信があった。

すると彼女はそれを指差して、

萌「これはいくらですか?」
営業マン「乗り出し価格で800万円ほどでございます」

フツーに考えて中々なお値段だ。しかし彼女は「え!?めちゃくちゃ安くない??」と驚いている。やはり。これも想定通りだ。常日頃わたしが2000万円以上の車しか見せていないため、家の次に高い買い物と形容される車は、家並みに高額だと思い込んでいる。そして彼女は小声で不満げにわたしに言う。「1000万円以下でクルマ買えるじゃん、なんで隠してたん」と。

ドアを開け、営業マンに質問する萌ちゃん。
(電動サイドステップにテンションが上がるわたし)

萌「こんなに安くてすぐ壊れませんか?」
営業マン「ご安心ください。保証プランのご用意がございます。万が一、修理が必要となった際は、当社が責任を持ってご対応させていただきます」

運転席に座り、営業マンに質問する萌ちゃん。
(オプション22インチAWにテンションが上がるわたし)

萌「これってお買い得ですか?」
営業マン「仰る通りでございます。新車で追加オプションを考えますと1500万円はいたします。こちらはお求めやすいプライスとなってございます」

間違いなく「買い」の風が吹いている。わたしは余計な発言を控え中立的な立場を装うことに徹した。

ステアリングを握り、呟く萌ちゃん。
(電子制御エアサスペンションにテンションが上がるわたし)

萌「このクルマ大きいから駐車とかぶつけそう(小声)」
営業マン「ご安心ください。360度サラウンドカメラを搭載し、パーキングガイド機能付きとなってございます。どなた様でも簡単に駐車していただけます」

グッジョブ、営業マン。わたしは勝利を確信した。

が、ここで演出みたいな出来事が起きた。息子が急にギャン泣きを始めた。どうにも治まる様子がなく、わたしたちは「すみません!また連絡します!」といって退散した。風は止んでいた。


2023年2月14日(火)

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