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ミスチル歌詞から紐解く 全曲解説 「SOUNDTRACKS」[The song of praise]

アルバム「SOUNDTRACKS」の9曲目です。
全文引用します
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積み上げて
また叩き壊して
今僕が立っている居場所を
憎みながら
愛していく
ここにある景色を讃えて
いつも取るに足らないことに頭悩まされてた
毛頭 それで何か変わりそうな予感すらしていないのに
だけど逃げるは論外
だってほかに行き場なんかない
昔は 自分の価値を過信しては
高い空を見上げて過ごした
駅ビルの四角い窓から
時々 夕日が顔を出し
憐れむように
讃えるように
僕の顔を照らした
僕に残されている
未来の可能性や時間があっても
実際 今の僕のままの方が
価値がある気がしてんだよ
そう誰もひとりじゃないんだ
僕だって小さな歯車
今なら 違う誰かの夢を通して
自分の夢も輝かせていけるんだ
積み上げて
また叩き壊して
今僕が立っている居場所を
呪いながら
愛していく
ここにある景色を讃えて
誰もひとりじゃない
きっとどっかで繋がって
この世界を動かす小さな歯車
誰もひとりじゃない
だからどっかでぶつかって
この世界で藻掻く小さな
そう小さな歯車
積み上げて
また叩き壊して
今僕が立っている居場所を
嫌いながら
愛していく
ここにある景色を讃えたい
<出典>Song of praise/ Mr.Children 作詞:桜井和寿
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年末のTV特番でも生演奏されたこの曲。直訳すると「賞賛の歌」。このアルバムの中で楽曲の構造としてもっともロックらしさを感じるアグレッシブで祝祭的な曲といえるかもしれません。
桜井さんいわく今の時代に世の中をぶち壊して、新しい、そして輝かしい、みんなと共有する明るい未来を提示するのは難しいので<憎みながら><呪いながら><嫌いながら>という前置詞がつきながら<愛していく>とうたうことがその前置詞たちを肯定することになるのではないかと。自分の内側をぶち壊しながら、でも構築しながら、なおかつ受け入れるというか・・・そうすることが革命なんじゃないかとそんな風に思ったりして、こういう歌詞になりましたとのこと。
ドラムの鈴木さんは<Oh Oh>っていうのがサビになる曲は自分たちにはなかったというのが最初の印象でタイトル通り賛歌だと思うと語っています。
私が個人的に気になるのは<歯車><小さな歯車>。この歌詞に天才マーケッターの桜井和寿を感じます。曲が多くの人に売れるには聞き手の共感です。恐らくミスチルファンは大抵がサラリーマンでしょう。サラリーマンといえば世の中の「歯車」なわけです。勘のいいミスチルファンなら気づくでしょう。<歯車>という歌詞は「くるみ」の中で2度登場します。<歯車のひとつにならなくてはなぁ><そうして歯車は回る この必要以上の負担に ギシギシ鈍い音をたてながら>この時の歯車は聞き手が自分事として捉え共感する人が多いのではないでしょうか?アルバム「HOME」の名曲[彩]のなかで<なんてことのない作業が 回り回り回り回って>これも私の中で歯車を連想させます。これも聞き手の共感です。そして今回の<歯車>さらに<小さな歯車>。コロナ禍に翻弄されるサラリーマンの小さな存在にも賞賛を与えたい、共感を与え得たい。そんな桜井さんの、マーケッターの一面と、本音も垣間見えるような力強いロック調の曲の構成が何とも言いえないセンスを表している曲であると。だから、TVで流れたのだろうかと深読みする次第です。

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