ミスチル歌詞から紐解く 全曲解説 「SOUNDTRACKS」[losstime]
アルバム「SOUNDTRACKS」5番目の曲です。歌詞全文を引用します。
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愛する者を看取った
ひとりの老婆は今日
エピローグ綴って
お迎えの時を待つ
「やがて...いずれ...そこに行くからね」
花瓶を置いて 写真の中に映る
過去と話している
ゆりかごを揺らし あやした
子供らも大きくなり
願った通り巣立った
今は都会で暮らす
「時間見つけて会いに行くからね」
電話の声は思い出の歌のよう
静かに聞いている
みんな いずれ
そこに逝くからね
生きたいように
今日を生きるさ
そして
愛しい君をぎゅっと
抱きしめる
<出典>losstime/Mr.Children 作詞:桜井和寿
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歌のテーマとして彼岸のようなものを感じたがこれは具体的にモチーフがあったのか、それとも自然と言葉が出てきたのか?という質問に対し桜井さんは
自然と、ですね。最近は仏像とかお寺を見るのが好きで、毎日仏像に手を合わせてから1日がはじまるんですけど、それが歌にも自然と出てしまうというか。ただ、こういう曲にバンドの音が入ってくるのはなかなか難しい。あまりにもテーマが個人的すぎるから、バンドで音を奏でる絵面よりもギター1本で歌っているほうがいいような気がしていた。同時にThe Beatlesの”Eleanor Rigby”みたいな感じで弦が入っているような、弦楽四重奏みたいなイメージはありましたといっております。
ギターの田原さんいわく、この曲は今回のレコーディング・チームに大人気だったと。当然歌詞の意味も伝えられているんだけれど、なんかこの曲が彼らの琴線に触れるみたい。イギリスにしろ、アメリカにしろ、古くからこういうタイプの曲はあると思うし、馴染みが良いんだと思う。この曲をエリオット・スミスみたいだって言う人がいて、ですよ、LAにレコーディングに行ったときに、まさにそのエリオット・スミスがそこで録っていて、プロヂューサーも来ていてお会いした翌日にこの曲を撮ったというエピソードが。
偶然にしろ凄いエピソードですね。
さらに桜井さん曰く
弾き語りで活動しているめっちゃスリーフィンガーが上手い、ユウサミイという人がいて、その音楽が良くてコピーしてみようから始まってスリーフィンガーをやってみた。その中でふとした瞬間に今の”losstime”の頭のコードをスリーフィンガーで弾いたらめっちゃいい響きで。それが全てで、そこからどんどん展開していったとのこと。
ネタ探しという言葉はちょっと聞こえが悪いかもしれませんが、常にどこかにヒントがないかと探し続けている事が、また新しいクリエイティブを生み続けるというエピソードですね。すばらしい
最後に私の考察を。私が一番ふと頭によぎったことは、映画「東京物語」のエピソード。小津安二郎監督の不朽の名作ですが、年老いた夫婦は、それぞれに巣立ち独立した東京に暮らす子供たちに田舎から会いに行くわけですが、その子供たちも東京で忙しくしていて、結果的に両親をぞんざいに扱ってしまうというような、親子関係、田舎と都会の断絶や希薄さが時代とともににじみ出てきというようなエピソードが綴られています。「losstime」で<今は都会で暮らす・・・>の一連の歌詞は「東京物語」を想起せずにはいられません。桜井さんも東京物語みたなきっと。と思わず勘ぐってしまいたくなる内容ですね。
ある生を全うしようとしている老婆の、人生の責任を全うした安堵感と<生きたいように 今日をいきるさ>という今まではそうしてこれなかった後悔みたいなものも入り混じっているでしょう。[losstime]とは人生を全うしてきて結果的に「残った時間」と、字面の通り「失った時間」のダブルミーニングなのではないでしょうか。
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