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ミスチル歌詞から紐解く 全曲解説 19thアルバム「重力と呼吸」[addiction]

19thアルバム「重力と呼吸」の6番目の曲です。直訳すると「中毒」。以下に歌詞全文を引用します。

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週末を跨いだ長い連休を前に
町は少し浮き足立って
行楽地を目指して渋滞が始まった
排気ガスを巻き散らかして

window に映り込んだ男は今
無表情を決め込んで自分を圧し殺してる

どんなに言い聞かせても
変われぬものがあるよ
欲しくてたまらない
more more more!
ほら 誰かが今日も
それを持て余してるよ

上級者は誰にも感づかれぬように
上手いことやっているらしい
あちら側の自分と
ここで生きる自分を
冷静にコントロールして

そろそろwooferに見悶えて
その衝動が今君の理性をぶち壊してく

今日は我慢できても
また手を出してしまうだろう
時々恐くなるよ
more more more!
さぁ 内なる声に
ほら 耳を澄ましてごらん

今日は我慢出来ても
また手を出してしまうだろう
決して満足なんか出来ないよ
more more more!
首を横に振ってみても
きっと拒めはしないだろう
欲しくて堪らないよ
more more more!

どんなに言い聞かせても
今日は大人しく出来ても
またすぐに欲しくなるよ
more more more!

<出典>addiction/Mr.children 作詞:桜井和寿

>>

桜井さんはインタビューで、歌詞の内容について、当時話題になっていた、DVや迷惑運転、そういうものが扱われてる気がするという問いに対し、ただ日常でインプットしているものが出てきているというか。僕は普通にただ生活者の視線で世の中を見てる、リスナーの方々が見てるものと変わらない景色をみていて、自ずとインプットしている。曲が鳴るからアウトプットしているだけ。自分がいち生活者としてこれは酷い、どうなっているんだってことがあってもそれを歌に書いてやろうとは思わない。むしろ「addiction」はライブ会場で、もっと刺激的な音が欲しいだろうとお客さんを挑発することを創造しながら書いてることが多い。

さらに桜井さんは、無意識を意識下においていくっていう作業をしていく感じで音楽を作るといいものが生まれる。無意識下には膨大なデータが詰まっていて、なんでこのリフが無意識下で生まれたんだろうと、紐解いてくためにメロディを作り、最後の最後にそうやって音楽を作る過程を見えてきた道筋を歌詞で形にしていく。これって皆さん理解できるでしょうか?歌作りに関しての極意を説いていると思われます。めちゃくちゃ面白いですね。歌詞は最後にできるって言ってますね。インタビューを見る限りそうみたいです。あまり歌詞に意味はないことも多いと桜井さんは言ってたりもします。インタビュアーが結構深読みして、歌詞の内容から桜井さんに、この内容はこんな感じですかって聞くんだけど、大概、インタビュアーの深読みが的外れなことが多いです。その時の制作の状況で桜井さん的にはもっと自然に作っていたり、したたかに計算して書いていたり・・・。このインタビュアーは毎回、アルバムが出るたびに桜井さんにインタヴューしてる方なんですが、結構な率で、的が外れてるのが桜井さん的にもきつくないのかなぁなんて思うのですが。ただ、リスナーもそんな捉え方をするのかなという風に桜井さんが捉えていたりすのかなとも思います。

そういう無意識から紐解く歌作りをいつからしているかという質問に対し、随分前からだと答えています。1994年の「Atomic Heart」ぐらいまでは。プロデューサーの小林さんのアドバイスで「こんな曲どう?」ってアドバイスをもらって作っていた。けれど、あるところからそれをしなくなり、無意識で作るからすごく感動することってあるって実感したからで。なるほど、あのひとの、あの感じの曲ねってやてると、自分で自分の音楽になかなか感動できなくて。

凄くないですか?この話。94年にはこの域に達していたということですね。ただ、何度かこのブログでも言わせてもらいましたが、これって実は王道なんですよね。逆説を組み合わせる王道。肉を切らせて骨を断つ。だから勝てるんですね。みんな肉を切らせたがりませんから、参入障壁になるわけです。ミスチルが売れ続ける参入障壁はここにあると思います。

このビジネス的観点から続けると。この曲で最も印象的なのは
<<上級者は誰にも気づかれぬように 上手いことやっているらしい>>

これって、桜井さんもライブでお客さんを挑発したいっていますが、この上級者ってミスチルであり、というか桜井さん自身だってことですよね。ここでタイトルの「中毒」ってこれはミスチルの音楽の「中毒」ってことのメタファだと私は思っています。つまり、桜井さんは資本家側であって、労働者側のリスナーに音楽という商品を売り続けますよってことですよね。桜井さんはもう突き抜けてしまったんですよね。音楽のクリエイティビティにおいて。だって、労働者側の日常生活の景色をインプットして、曲が鳴るから、アウトプットするってだけって自分で言っちゃってますからね。そこまで突き抜けた存在になっているので、極論どんな曲だって、リスナーには売れるってことです。わたしもありがたがって買いますし。そんな視点でミスチルと桜井さんを紐解くと、この資本主義のゲームでの勝ち方が見えてくるわけです。おもしろいなぁ



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