見出し画像

ミスチル歌詞から紐解く 全曲解説 19thアルバム「重力と呼吸」[箱庭]

19thアルバム「重力と呼吸」5番目の曲です。歌詞全文を引用します。

<<

ヒリヒリと流れる 傷口から染み出る

赤い血の色の悲しみが 胸にこぼれる

ジリジリ寂しさは現実味帯びてくる

気づかぬふりはできない でも認めたくもない

きっと僕が考えていた以上に

小さな箱庭で僕は生きてる

誰の為の愛じゃなく

誰の為の恋じゃなく

不器用なまでに僕はただ君を大好きでした

明日には明日の風が吹くっていうけど

今日の太陽を浴びたい 月に見惚れたい

いつの間に過ぎ去っていた誕生日

祝ってくれる人がもういない事を知る

誰の為の愛じゃなく

誰の為の恋じゃなく

乱暴なまでに僕はまだ君を好きで

残酷なまでに温かな思い出に生きてる

箱庭に生きてる

<箱庭/Mr.Children 作詞:桜井和寿>

>>

この曲に関しての桜井さんの直接のコメントが発見できないので、このアルバム全体のインタビューを根拠に私なりに紐解きます。

「箱庭」とはどういう意味か?

要するにミニチュア遊びですね。それと箱庭療法というものも存在します。表現をミニチュアで自由にさせる事で、言語化が苦手な患者に効果的な療法でもあるようです。

自作の20thアルバム「SOUND TRACKS」のインタビューで、桜井さんはラブソングにおいて、何も問題がないようなものは書かないといっています。この歌詞も勿論そうでしょう。ただの失恋というよりは、大人の事情でちょっと病んでるって印象をうけますね。

そりゃ恋なんて言わばエゴとエゴの‥シーソーゲームで言ってましたが、男女がそれぞれの妄想を繰り広げ、今回はその妄想は男女間で成立しなかったってことでしょう。女の立場の表現はないので、暗に女は直ぐに切り替えていて、男だけがひがんで、温かな思い出に浸っているという構造。曲調はとても失恋ソングには聴こえてこないポップな曲調だと感じます。管楽器のホーンなんかも使っているみたいですし。

明るい曲調に、男が傷ついた女々しい歌詞。「乱暴なまでに‥」「残酷なまでに」この表現も愛や恋の温かみとは逆説的な表現です。組みこの逆説の組み合わせは男の妄想がちょっと病的だってことのメタファなのだと僕は思います。

曲が3分ちょいというのも近年の桜井さんの曲作りの特徴をあらわしていますね。余計なイントロや間奏、アウトロを省く方がいい。彼自身がリスナーとして他者の音楽を聴きながら感じているとのことです。

この曲の短さと、歌詞と曲の逆説的関係。こういう曲って私は個人的に好きです。奥深い。天才クリエイター桜井和寿の奥深さを知ることが出来るからですね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?